7月21日

 

 国立天文台は20日、米国のカーネギー研究所、ハワイ大学、北アリゾナ大学の研究者からなる研究チームがすばる望遠鏡による観測により、木星の周りを回る衛星を新たに12個発見したと発表した。今回の発見により、木星の衛星の数は79になった。

 

 今回新たに見つかった12天体は、3つのグループに分かれる。12天体のうち9個は、木星から遠く離れた軌道を木星の自転(左回転)とは逆の右回転をする。アステロイドや他の衛星と衝突した衛星の残骸であり、逆回転で木星を2年で公転すると考えられるとしている。

 

 12天体のうち2天体は木星付近を木星と同じ左回転で1年よりも少し短い期間で公転するものである。そして最後の1天体は、かつては木星から遠く離れていて木星とは逆回転をする天体を含む衛星集団に属していたものの、それらの天体と正面衝突することによって木星と同じ左回転を行う特異な天体であることがわかった。この特異な天体は「Valetudo」という名前がつけられた。1年半で木星を公転する。

 

 研究チームは、太陽系外縁部に存在すると理論的に予測されている「プラネット・ナイン」を、すばる望遠鏡などを使って探査している。また木星の近くの天域を探査することで、遠方の「プラネット・ナイン」に加えて木星の近くに存在する天体をも探し出す「一石二鳥」の観測を狙っていた。2017年には南米チリにある口径4メートルの望遠鏡で新しい衛星の候補天体を見つけ出すことに成功。ただしこの候補天体が本当の衛星であることを確認するために動きを追跡する必要があった。そこで研究チームはマウナケアにあるハワイ大学の口径 2.2 メートル望遠鏡を使って追観測を行い、これらの天体が確かに木星の衛星であることを確認していた。

 

 さらに研究チームは、すばる望遠鏡 HSC を使った広視野観測によって、衛星の動きを追跡して軌道の精度を高めることにした。観測する際には月がちょうど木星のそばにあったため、露出時間を短くしなければならず、そもそも木星の新衛星はとても暗いために複数の画像を重ね合わせる必要があった。これらの困難を乗り越え今回の観測結果に至った。

 

 今回の観測結果は、我々の住む太陽系の理解をする手助けになるものであるとしている。

 

 

 

( C ) カーネギー研究所

 青い線が木星の自転と同じ左回転をする2天体の軌道。赤い線は、木星の自転とは逆回転をする9天体の軌道。緑の線は「Valetudo」の軌道。