8月11日

 

 NASAはアメリカ現地時間9日、エクス・マルセイユ大学のヴィヴィエン・パルメンティア氏を中心とする研究チームが、ウルトラホットジュピターと呼ばれるWASP-121bなどの惑星において、恒星の光があたる場所(昼側)において水蒸気が存在しない現象を説明する新たな理論を構築したと発表した。惑星表面の温度が2,000~3,000℃の高温であり、恒星からの強い光がウルトラホットジュピターにわずかに存在する水分子を蒸発させるだけでなく、水素と酸素の原子に分離させた上で強い風によって光の当たらない場所(夜側)に原子を運ぶ。そして夜側(表面温度1000℃)の比較的温度の低い場所において再度水素と酸素が結びつき水分子に戻る。この水分子が再度昼側の場所に運ばれて同じようなサイクルが繰り返されるという理論である。WASP-121bにおける大気のデータはスピッツアー望遠鏡及びハッブル望遠鏡によって観測されたものを使用した。

 

 ウルトラホットジュピターは太陽系外惑星であり、系の中心に存在する恒星との距離が近いがために表面温度が高い惑星のことである。今回観測対象となったWASP-121b、WASP-103b、WASP-18b、HAT-P-7bは常に恒星に同じ面を向けながら公転していることが確認されており、恒星の光が当たる昼側の表面温度は2,000~3,000℃、光が当たらない夜側の温度は1,000℃程である。そして水が昼側の大気において存在しないことが観測されていた。

 

 その一方でウルトラホットジュピターに似た惑星やホットジュピターの表面温度のデータは1990年代半ばに観測されており、大気において水が存在することが確認されていた。よってこれらの惑星とは対照的にウルトラホットジュピターの昼側において水が大気において確認できない理由として、惑星が酸素ではなく炭素で構成されていることが理由として挙げられていたが、ときどき昼側と夜側の境目で流れてくる水の軌跡が発見されていたこともあり、ウルトラホットジュピターの昼側において水が存在しない理論とはなりえなかった。

 

 ウルトラホットジュピターの昼側において水が存在しない理由を説明する理論を説明するべく、パルメンティア氏は褐色矮星と呼ばれる、質量が小さいがために十分に輝く星になれない星形成理論をウルトラホットジュピターにおいて適用することで何かの手がかりを得ようと試みた。またスピッツアー望遠鏡による観測によってホットジュピターにおいて一酸化炭素分子における赤外線が観測されなかった事実も利用した。これはホットジュピターの表面には一酸化炭素同士が強く結び合った状態で存在するがために熱にも耐えられる状態で存在し、光を発しないというものである。これはウルトラホットジュピターが中心から外側にかけて温度が上がっていることを示しているとしている。

 

 これらの大気モデルを構築した結果、研究チームはウルトラホットジュピターの昼側で水が蒸発し、強い光によって水素と酸素原子に分裂させられ、強い風によってそれらの原子が夜側に運ばれ、比較的温度の低い場所によって再度水分子が構築されると同時に雲ができあがり、その雲が昼側に戻って雨を降らせるという一連のサイクルモデルを構築した。これは水分子に限らず、酸化チタンや酸化アルミニウムも同様なサイクルをたどるとしている。

 

 しかしまだウルトラホットジュピターの昼側の大気で水分子が観測されない理由として挙げられる要素がいくつかあることや、観測データが不十分なところがあるため研究を重ねていく余地がある。パルメンティア氏は2021年に打ち上げ予定のジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡が足りない観測データをもたらしてくれることを期待し、その観測データを基にした研究を進めていくことを目標としている。

 

 

 

( C )NASA/JPL-Caltech/Vivien Parmentier/Aix-Marseille University (AMU)

ウルトラホットジュピターWASP-121bのイメージ。異なる視点から見た惑星を表している。オレンジ色に輝いているのはウルトラホットジュピターの表面温度から推定される色を示している。