9月24日

 

 欧州宇宙機関(ESA)は19日、バルセロナ大学のテレーサ・アントーヤ氏が率いる国際研究チームが、恒星のデータ収集のために2013年に打ち上げられた人工衛星ガイアのデータから、地球からおよそ3~9億光年離れた場所において過去の銀河衝突の影響によってもたらされた、池のさざ波のような動きをする恒星の動きを捉えることに成功したと発表した。

 

 人工衛星ガイアは、10億以上のもの星の位置を測るだけではなく空に対して水平方向の速度も測ることができる。研究者は位置と速度の分布を使って星の動きの研究をすることができるが、位置と速度の関係は“速度空間”と呼ばれる。

 

 テレーサ氏はこの速度空間において、ガイアの星のデータをプロットしたところ、銀河同士が衝突後、時間が経つにつれて恒星がカタツムリの殻のような模様のグラフを描くことに成功した。このグラフは横軸を銀河の水平面に対する上下方向の高度、縦軸に同じ上下動方向に動く恒星の運動速度をプロットしたものである。これはこれまでに発見されなかった現象である。

 

( C ) T.Antoja et al. 2018

速度空間におけるカタツムリの殻構造 

 

 テレーサ氏はこのグラフについて「最初はこの現象はとても不思議に感じ、あまりにもグラフの形が綺麗であるため、何かデータに問題があったのではないかと考えた」とコメントしている。しかしガイアのデータはこれまでに何回もの研究者による検証が行われており、その正確性は保証されているため、今回の研究結果は相当妥当なものであるとしている。

 

 テレーサ氏は、現段階でこの現象について、池に石を投げたときに水面がさざ波のように広がっていく現象に似ているとしていると指摘した。

 

 また我々が住む天の川銀河は小さな銀河や星の残骸を取り込むことによって成長してきたことがわかっている。さらにテレーサ氏の研究グループは、天の川銀河の近くに存在する、いて座矮小銀河がそのような成長段階にあり、いて座矮小銀河が天の川銀河の近くを通り過ぎる際に重力効果が働き、天の川銀河のさざ波のような恒星の運動を引き起こすかもしれないと指摘している。その理由は、カタツムリの殻のような構造を解析した結果、天の川銀河といて座矮小銀河が2~10億年前に現在よりもかなり近くに接近していたことがわかったことが挙げられる。

 

 これらの背景を踏まえて、今後テレーサ氏が率いる研究チームは、カタツムリの殻の構造がなぜ描かれるのかを調査していくとしている。

 

 

( C ) ESA

ガイア衛星のデータから描かれた天の川銀河のイメージ図。