10月6日

 

 ESAは10月2日、オランダのライデン大学の天文学研究チームが、最新の人工衛星ガイアによる10億以上もの恒星のデータから、天の川銀河中心に向かって速い速度で向かってくる恒星を発見したと発表した。この恒星は他の銀河、もしくは天の川銀河のハローからやってきたものと推定されている。天の川銀河中心から遠方に速い速度ではじき出される星を探し出す作業途中に発見したもの。

 

 天の川銀河は10億個以上の星で構成されており、ほとんどの恒星は天の川銀河のディスクと呼ばれる円盤状に配置されている。天の川銀河中心は、強力なブラックホールの存在によって、バルジと呼ばれる膨らんだ構造をしている。恒星は秒速数百kmという速度で天の川銀河の周りを回る。そしてこれらの星の動きは銀河の歴史を物語る上で必要な情報源となる。一番高速で動く恒星は、ブラックホールとの相互作用によってエネルギーを蓄え、天の川銀河の縁に追い出された後に安定的に存在すると考えられている。この高速で動く恒星は”hypervelocity stars”と呼ばれる。

 

 オランダのライデン大学の天文学研究チームはガイアのデータを使って高速で動く星の研究を行った。その結果、研究チームの一人であるエレーナ・マリア・ロッシ氏は、天の川銀河から高速で銀河外に飛び出していくほどのエネルギーをもつ20個の恒星を発見した。

 

 その一方で研究チームの同僚であるトマッソ・マルケッティ氏は、この20個の恒星のうち、天の川銀河中心に向かって高速で向かっていく恒星を発見。そしてこの恒星は天の川銀河の近くに存在する銀河の1つ、マゼラン星雲からやってきたものであるか、もしくはさらに遠くの銀河からやってきたものの可能性があるとしている。

 

 もし銀河中心にやってくるこれらの恒星の情報を詳しく調べることができれば、その恒星の起源である銀河や伴銀河の詳しい情報を調べることができるかもしれない。

 

 さらにエレーナ氏はこの銀河中心にやってくる恒星が、強力なブラックホールとの相互作用によって速度が加速されていると強調している。これらの恒星の存在が、天の川銀河の近くにも強力なブラックホールが存在することを示唆している。もしくは恒星がかつては連星系をなし、片方の星が超新星爆発をした際に、天の川銀河にやってきたことも考えられるとコメントしている。

 

 また他の説明としては、天の川銀河のハローにおいて元々存在した恒星が、他の矮小銀河との相互作用によって、天の川銀河の中心に向かっていくことも考えられるとしている。

 

 トマッソ氏は、「天の川銀河のハローからきた恒星は、かなり古くから存在し、ほとんどが水素で構成されていると考えられている一方、他の銀河からきた星は重元素を含んでいると考えられる。この恒星の色情報が何の元素で構成されているかを我々に教えてくれる」とコメントし、色情報を調べることが高速で天の川銀河中心に向かっていく恒星の起源を説明することを示唆した。

 

 

 

( C ) ESA (artist’s impression and composition); Marchetti et al 2018 (star positions and trajectories); NASA/ESA/Hubble (background galaxies)

 

今回発見された20個の恒星の軌跡。13本のオレンジ色の線は外部からやってきた恒星の軌道を示し、7本の赤い線は天の川銀河から重力を振り切って、外部に向かっていく恒星の軌道を示している。