11月6日

 

 オランダ、フローニンゲン大学のアミナ・ヘルミ氏を中心とする研究チームは10月31日、天文衛星ガイアのデータを解析した結果、天の川銀河の主要な星(太陽を含む)回転軌道とは反対の軌道を描く星達の分布地図を描くことに成功したと発表した。この研究結果は、過去に天の川銀河が別の巨大な銀河との衝突によって形成されたことを示唆する。この別の巨大な銀河は、ガイア・エンケラドスと命名された。

 

 天の川銀河は、ディスクと呼ばれる星が円盤状に集まった部分と、銀河中心に膨らんだ構造を持つバルジと呼ばれる部分で構成されている。ディスクはさらに2つの部分で構成されている。深さが数100光年の薄いディスクと深さが数1000光年の厚みのあるディスクである。これらのディスクのうち、10~20%の星は、その起源が解明されていない。

 

 研究チームは、ガイアが最初に22ヶ月にも渡って行った観測データを解析。ガイアのデータは、およそ700万もの星の3次元による位置、速度のデータを含んでいる。このうち3万個の星が天の川銀河を横切るような動きをしており、私達が住む太陽系の近くをも通っている。またHR図にこれらのデータをプロットして色と明るさについて天の川銀河と比較したところ、天の川銀河とは異なる構成をしていることも判明した。

 

 アミナ氏はかつてコンピューターシミュレーションによって天の川銀河は、2つの銀河が衝突合体することによって生まれたものであるということを推定した。2つの銀河が衝突した可能性があるとしたのには、異なる化学組成を持つ星が天の川銀河内において発見されたことが背景にある。今回の研究結果は、この予測とも合致している。今回のガイアのデータを解析した結果、10億年前にガイア・エンケラドスと天の川銀河が衝突し、これらの銀河の大きさの比は4対1であったとされている。

 

 天の川銀河とは別の銀河は、ギリシャ神話内のガイアの子供にちなんで、ガイア・エンケラドスと呼ばれることになった。

 

 さらにガイア・エンケラドスには、数百もの変光星、13個の球状星団が存在することが判明した。

 

 研究チームの一人である、オランダ、ライデン大学のアンソニー・ブラウン氏は、「今回の研究成果は、天の川銀河の歴史を解き明かす上でのスタートであり、今後も研究をしていくことが楽しみである」とコメントしている。

 

 

 

( C )ESA/Gaia/DPAC; A. Helmi et al 2018

ガイア・エンケラドスの図。紫色の部分は近くにある星、黄色い部分は遠くにある星を示している。白丸は球状星団、シアンの星マークは変光星を示している。