11月10日

 

 国立天文台は9日、ハーバード・スミソニアン天体物理学センターのグラント・トレンブレー氏を中心とする研究チームが銀河団エイベル2597をアルマ望遠鏡や欧州南天天文台VLT望遠鏡により観測した結果、銀河団中心部に横たわる巨大楕円銀河中心部において超巨大ブラックホールが周囲のガスを集めてそれらのガスを噴き出す噴水のような激しい現象を捉えたと発表した。

 

 銀河団エイベル2597は地球からおよそ10億光年離れた場所にあり、ひとつの巨大楕円銀河といくつもの銀河が集まった構成である。これまでに研究者達の間で、銀河団中心に横たわる巨大楕円銀河中心に存在する超巨大ブラックホールがガスの噴水を起こす現象が予想されており、こうしたガスの噴水が銀河の星の材料を循環させていると考えられていた。

 

 今回の観測によってガスの噴水現象がはっきりと捉えられた。グラント・トレンブレー氏は「銀河の中心に位置する超巨大ブラックホールは、噴水でいうところの「ポンプ」の働きをしているのです。冷たい分子ガスがブラックホールに流入し、そしてガスが放出されている証拠をはっきりととらえることができました。」とコメントしている。研究チームはこの噴水について、自己制御が効いている結果生じていると考えている。ブラックホールに向かって落下してくるガスのエネルギーが「ポンプ」の動力源になり、高速の高温ガスジェットが放出される。放出されたガスは銀河のまわりにある「ハロー」を構成するガスと衝突し、やがて銀河本体や超巨大ブラックホールの重力に引かれてまたブラックホールに戻ってくる、というサイクルが成立しているとしている。太陽30億個分の質量をもつ大量の分子ガスが、巨大楕円銀河の中心10万光年の範囲にわたって細長くのびていることもわかった。またNASAのチャンドラX線望遠鏡のデータを使うことで、より高温のガスの様子も捉えることができたとしている。

 

 研究者たちは、多くの銀河で噴水現象が起きていて、銀河の進化に多大な影響を及ぼしているだろうと考察している。

 

 

( C ) ALMA (ESO/NAOJ/NRAO), Tremblay et al.; NRAO/AUI/NSF, B. Saxton; NASA/Chandra; ESO/VLT

銀河団エイベル2597の中心にある巨大楕円銀河周辺の疑似カラー画像。アルマ望遠鏡で観測された冷たいガスを黄色、VLT望遠鏡MUSEで観測された温かい水素ガスを赤、チャンドラX線望遠鏡で観測された高温の電離ガスを紫に着色している。