11月17日

 

 ドイツのキール大学の研究員らからなる国際研究チームは7日、人工衛星ゴーチェによる観測データから、古代の南極の氷下においてどのような大陸が形成されていたかを特定することに成功したと発表した。5年前に打ち上げられたESAの人工衛星ゴーチェによって、地球上のあらゆる場所における重力の違いが明らかになり、重力分布地図なるものが作成された。研究チームはこの重力分布地図を利用して、今回の研究発表に至った。

 

 ゴーチェは地球上の重力を計測するとともに、あらゆる方向における重力による加速度を測定することで、その重力勾配を記録した人工衛星である。

 

 国際研究チームは、3次元の重力分布データから、重力の等高線地図なるものを作成した。この重力分布地図は、その形状を指数化したものとして色わけされている。

 

 研究を主導したキール大学のプロフ氏は、「この重力分布地図と、地震学のデータを組み合わせることで、マントル表面及び上層の3次元分布を作成することができ、プレートテクトニクスとマントルの流動による相互作用を理解するのに役立つ」とコメントしている。

 

 この重力分布地図からは、“クラトン”と呼ばれるカンブリア紀以前に安定化した大陸地殻の一部を示す岩石圏を特定することができる。特に南極大陸は氷で覆われているため、これまでに観測できなかった部分をこの重力分布地図によって調査できるようになった。

 

 早速研究チームは、南極大陸の西側部分が、東側部分に比べて薄い岩石圏を示していることを発見した。この構造は、オーストラリアやインドと似たような若い造山運動によって分離された、古いクラトンの影響でできたものであるとしている。この構造がどのようにして南極の氷の動きに影響を与えるか、また氷の溶融に対して南極大陸がどのように動くかが予測できるとしている。

 

 

( C ) Kiel University/BAS

 地球上における重力の変化率を計測し、等高線として表した後、その等高線の形状を指数化した分布図。ドーム型、フラット型、ボウル型と色わけされている。