12月1日

 

 東京大学のリビングストン大学院生、田村教授を中心とする国際研究チームは11月26日、NASA のケプラー宇宙望遠鏡によるK2 ミッション(*注1)およびESAのガイア宇宙望遠鏡の生データを解析した結果、新たに60個の太陽系外惑星を発見したと発表した。同研究チームは今年8月にも太陽系外惑星を発見しており、今回の発表とあわせると合計104個の太陽系外惑星を発見したことになる。また、主星に対して公転する惑星の周期が24時間以下である「超短周期惑星」を3個発見し、複数惑星系(*注2)を20個以上発見した。超短周期惑星の発見はこれらの形成・進化を理解するために重要である。これらの研究成果は今後の系外惑星におけるアストロバイオロジー(宇宙と生命のつながりを考える学問)展開のための極めて重要な鍵になるとしている。

 

 国際研究チームはK2のデータから、155 個の惑星候補天体を詳細に解析することで、これらの候補天体の性質や惑星系のパラメータを決定した。主星が明るいため、これらの多くの惑星はその組成と大気を調べるための詳細な研究をするために最適であるとしている。「155 個の候補天体の解析を追加することで、私たちはK2 のデータに数百の系外惑星はまだ隠されていると見積もっている」とリビングストン氏はコメントしている。

 

 新たに発見された惑星の中には、20 個以上の複数惑星系と、1 年が24 時間以下という超短周期(USP: Ultra-Short Period)惑星が含まれている。このうちK2-187 という惑星系(図1)には、4 つの系外惑星が存在しており、その中の一つは超短周期惑星である。このような超短周期惑星は、その形成が謎に包まれているため、最近注目され始めている。リビングストン氏は「この惑星系は、どのように超短周期惑星が形成されたかについて重要な手がかりになる。」とコメント。また、近くにある地球のような小さい惑星について、60 個中18 個は地球の2倍以下の質量の大きさであり、大気のほとんどない岩石惑星である可能性が高いとしている。

 

*注1
2009 年に打ち上げられたNASA のケプラー宇宙望遠鏡は、はくちょう座の一領域に5000個を超える系外惑星とその候補を発見した。しかし2013 年の故障により、その後は新しいミッション「K2」として活用されている。この宇宙望遠鏡が発見した天体はあくまで惑星候補であり、地上観測等による確認・実証が不可欠である。K2 ミッションではこれまで300 個弱の惑星が実証されてきたが、より多くの多様な惑星の実証が求められている。

 

*注2 複数の惑星からなる惑星系であり、重元素量が少ない低金属量星の周囲に作られやすいとされている。

 

 

 

( C ) (NASA/JPL-Caltech/R. Hurt,T. Pyle (IPAC), UTokyo/J. Livingston)

K2-187 の惑星系の想像図。主星(一番左) の大きさは太陽の0.9 倍。主星に近いものから地球の1.3 倍、1,8 倍、3.2 倍、2.4 倍の大きさ。一番内側が超短周期惑星。

 

 

( C ) John H. Livingston

発見された系外惑星の軌道分布の図。全て水星以下の軌道で、惑星の大きさも小さいものは水星サイズ、大きいもので木星ほどの大きさ。青い色は地球程度の温度であり、白っぽいものは熱い金星表面温度程度、赤い色はさらに熱く溶岩のような温度。