12月22日

 

 米国・カーネギー研究所などの研究チームは17日、すばる望遠鏡の観測により太陽系で最も遠い地点で天体を発見したと発表した。この新天体は太陽-地球間の距離(1億5000万km)の約120倍(120天文単位)の遠い場所で発見され、冥王星 (距離 34 天文単位)の 3.5 倍以上の距離となる。この新天体は、国際天文学連合小惑星センターによって「2018 VG18(18は下付き数字)」という仮符号が与えられた。これまで太陽系で最も遠くで発見された天体「エリス」は発見当時、距離が96天文単位であったため、それを上回る距離である。

 

 研究チームは理論的に予測されている太陽系の未知の惑星「プラネット・ナイン (第九惑星)」を含む、太陽系外縁部の天体の探査を行なっている。今年10月に発表された遠方の太陽系外縁天体2015TG387(387は下付き数字)も同研究チームによるすばる望遠鏡を使った発見であった。距離80天文単位で発見され、その軌道の性質はプラネット・ナインの存在を支持すると研究チームは考えている。

 

 研究チームは2014年にも外縁天体「2012 VP113(113は下付き数字)」(現在の距離84天文単位) を発見し、その軌道からプラネット・ナインの存在を提唱した。2012 VP113と 今年10月に発表された 2015 TG387の軌道は、海王星や木星といった太陽系の大きな惑星から離れており、これら惑星から受ける重力的な影響はほとんどないとされている。このような太陽系外縁天体を発見することは、太陽系の外縁部での様子を探る上で重要であると研究チームは考えている。また今回発見された天体 2018 VG18 の軌道は未確認であるため、その存在がプラネット・ナインを裏付けるかどうかはまだわからないとしている。

 

 「2018 VG18 はこれまでに観測されたどの太陽系天体よりも遠く、また遅く動いているため、その軌道を把握するにはこれから数年の追跡観測が必要となります。ところが新天体はこれまで確認された遠方の外縁天体に近い場所で発見されており、もしかしたらこれら天体と似た軌道を持っているかもしれません。これまでに発見されている遠方の太陽系外縁天体の多くは、軌道の性質がお互いに類似しており、これらは数百天文単位というたいへん遠方にある未知の惑星の影響を受けている、と考えられます。」と研究チームのSheppard氏はコメント。また研究チームのTholen氏は、「新天体 2018 VG18 について現在我々が知っているのは、その距離と大体の大きさ、そして色だけです。新天体はたいへん遠くにあるため軌道速度が遅く、おそらく太陽の周りを一周するのに 1000 年はかかるだろう。」とコメントしている。

 

 2018VG18 の発見画像は、すばる望遠鏡により2018年11月10日に撮影された。新天体の発見後、研究チームは南米チリのラスカンパナス天文台のマゼラン望遠鏡を用い、12月初めに2度目の観測を行った。この追跡観測により2018VG18 は距離120天文単位に存在していることがわかり、100 天文単位を超える距離での初めての天体の発見となった。また明るさから新天体の大きさは約500キロメートルであり、おそらく球形の準惑星であろうと研究チームは考えている。また新天体は氷を多く含む天体に見られる、ピンク色の色調をしている。
  
 国立天文台の渡部潤一副台長は、今回の発見に対し、「太陽から100天文単位を超えるところで新天体が発見されたのは、今回が初めてです。すばる望遠鏡の広視野で深いサーベイ能力が十分に生かされた成果で、今後も同様の遠方の太陽系外縁天体が発見されてくると期待されます。そうなると、次第に太陽系外縁天体の分布が一様かどうか、また一様でないとすれば、その原因は未知の第九惑星なのか、などの議論が盛んになってくると期待されます。」と今後の期待を述べた。

 

 

( C ) Scott S. Sheppard, David Tholen

すばる望遠鏡が2018年11月10日に観測した、新天体「2018 VG18」の発見画像。1時間ごとに撮影された画像から、新天体の動きが見て取れる。

 

 

 

( C ) Roberto Molar Candanosa / カーネギー研究所

2018 VG18の想像図

 

 

 

( C ) Roberto Molar Candanosa, Scott S. Sheppard / カーネギー研究所

新天体2018 VG18と太陽系の他の天体の距離