2月27日

 

 ESAは20日、ロシア宇宙研究機関のバリウキン氏を中心とする研究チームが、太陽観測衛星SOHOによりかつて行われた地球のジオコロナ(地球大気の最も外側に広がる領域。水素原子が太陽光の紫外線を散乱し、発光している。)の観測データから、ジオコロナが月の公転軌道を越えて、地球-月間の2倍の距離にまで達していることが判明したと発表した。この距離は地球から63万キロメートル離れたところ(地球の直径の50倍)である。

 

 バリウキン氏は、「月が地球大気中を公転していることになるという、新たな発見がなされた」とコメントしている。

 

 太陽は水素原子と、ライマンアルファ線と呼ばれる紫外線を通してエネルギーのやりとりをしている。水素原子はライマンアルファ線を吸収したり放出したりできるが、このライマンアルファ線を観測することによって、今回のようにジオコロナの領域を特定することに成功した。

 

 また今回の研究結果に加えて、太陽の光が地球の昼側の領域におけるジオコロナの水素原子を圧縮して、それが地球の夜側の高密度化された水素原子の大気をもたらすことがわかった。水素密度は、地球大気から月に向かって60000km離れたところまでは1立方cmあたり70個であり、月までの距離(380000km)においては0.2個であるとしている。この水素密度は真空に近い状況であり、水素が太陽光を散乱してジオコロナが紫外線と結びついた状況になったとしても、月のまわりの宇宙飛行を行う上でこの紫外線があまり人体に影響のあるものではないことがわかる。

 

 ロシア宇宙研究機関のバリウキン氏を中心とする研究チームは、SOHOの観測データを今後も研究していく予定であるため、地球大気に関する新たな知見をもたらされることが期待される。

 

 

 

( C ) ESA

ジオコロナの領域が月までの距離の2倍にまで達している。

 

 

( C ) ESA/NASA/SOHO/SWAN; I. Baliukin et al (2019)

ジオコロナにおける水素の放射線強度。真ん中下の白い丸が地球であり、その周りを囲む点線は月の軌道である。青は放射線強度が弱い、すなわち水素密度が低いことを示しており、赤いところほど放射線強度が強い、つまり水素が高密度な領域であることを示している。