4月24日

 

 NASA ジェット推進研究所、東北大学、国立天文台、情報通信研究機構などの研究チームは9日(ハワイ現地時間)、すばる望遠鏡の中間赤外線カメラ COMICS による木星の観測により、太陽風によって木星の極域で生じるオーロラが、成層圏にあるメタンガスを加熱している様子を明らかにしたと発表した。これは従来考えられていたよりも木星大気の深い部分まで加熱していること示唆している。さらに、太陽風が木星にぶつかると、木星大気の様子が速やかに変化することも明らかになった。
  
 オーロラは太陽風が惑星磁場に沿って惑星極域に流れこみ、上層大気の分子と衝突して発光する現象のことである。オーロラが大気中のガスと相互作用すると地球大気を加熱することもわかっている。木星でも同じことが起こるが、今回のすばる望遠鏡による新しい観測から、木星のオーロラが木星大気の深い部分、つまり成層圏までも加熱に影響を与えていることが明らかになったのである。

 

 今回の観測結果は、2017年1月、2月、5月に行われた観測キャンペーン(すばる望遠鏡とNASAの木星探査機「ジュノー」による協調観測)の間に撮影された木星の中間赤外線画像からもたらされた。この中間赤外線画像は木星のオーロラが生じる極域においてメタンガスが加熱されている様子を表す「ホットスポット」をはっきりと写し出した。これは木星大気中で炭化水素の化学反応が起きたことを示している。また太陽風が木星にぶつかってから1日以内に、木星大気中の化学的性質が変化し大気の温度が上昇したことを明らかにした。

 

 すばる望遠鏡を使った木星観測プログラムの研究代表者の一人である笠羽さん(東北大学)は、「この成果は、太陽活動によって宇宙空間から降り注ぐ高エネルギー粒子が、木星大気の加熱や化学反応を引き起こすことを明確に示しました。このような現象は強い太陽・恒星活動にさらされる過酷な環境を持つ惑星、例えば若かりし頃の地球や、他の恒星を巡る系外惑星の大気中で起きえる複雑な有機化学反応について、手がかりを与えてくれるものでもあります」と、今後の研究発展の期待感をコメントした。

 

 

( C ) 国立天文台・NASAジェット推進研究所

図1:すばる望遠鏡搭載の冷却中間赤外線撮像分光装置で観測された、2017年1月11—12日の木星のメタン発光強度分布。南極(木星下側)および北極(木星上側)で見られる発光が、2017年1月12日に増大する様子がわかる。

 

 

( C ) NASAジェット推進研究所

 

図2: 木星位置における宇宙天気(太陽風)変動のモデル予測。大きな極域メタン発光増大がみられた2017年1月12日(橙線)に、太陽風強度の増大が推定された。緑色の縦線は図1の左の撮像、橙色の縦線は図1の真中と右の撮像の観測時間を示している。