5月22日

 

 ESAは4月8日、1961年から2016年までのおよそ半世紀において、およそ世界中で9.625兆トンもの氷河が溶けており、海水面が27mm上昇していると発表した。スイスのチューリッヒ大学の研究チームが、複数の人工衛星データを活用し、古典的な地質学調査手法を用いて世界中の19もの異なる地域を対象として調査を行ったもの。

 

 この半世紀において最も多く氷河が溶けた場所はアラスカであり、グリーンランド、ロシアと続いている。

 

 研究チームの一人であるミカエル氏は、「世界中のそれぞれの地域でどのくらい氷河が溶けているかについて、正確な情報を提供できるようになった。しかしもっと大事なことは、最近30年間において著しく溶けているということである。1年間で1mm海水面が上昇すると、氷河は3350億トン溶け出していくことがわかっている」とコメントしており、海水面が上昇していることについて警鐘を鳴らした。

 

 また研究者の間では、海水面の上昇の1番の駆動源は海水自体の温度上昇であり、氷河溶融は2番目に海水面上昇に寄与すると考えられている。ミカエル氏によれば、「ヨーロッパアルプスに溜め込まれた氷は年々、前年比3倍くらいの量の氷が溶け出しているが、この30%の量が海水面上昇に寄与している。」とコメントし、ヨーロッパアルプスの氷が海水面に影響する度合いの見積もりを出している。

 

 世界中で氷河溶融の影響は深刻なものと考えられており、数百万もの人々に対する水不足、水力発電力の低下、作物の水不足をもたらすことになるかもしれない。ESAは引き続きモニタリング精度の向上及び、モニタリングの継続をすることの重要さを主張している。

 

 

( C ) ESA, adapted from Zemp et al. (2019) Nature, and data courtesy of World Glacier Monitoring Service

世界の氷河溶融量。Gtはギガトンの略であり、1000ギガトンは1兆トンに相当する。