10月23日

 

 NASA(アメリカ航空宇宙局)とNOAA(アメリカ海洋大気庁)はアメリカ現地時間21日、2019年9月、10月におけるオゾンホール(オゾン層が破壊されて穴になっている場所)の大きさが1982年の観測以来最小になったと発表した。南極大陸の成層圏における高温化がオゾン層の減少に歯止めをかけたことが原因であるとしている。

 

 NASAとNOAAの人工衛星によってオゾンホールの大きさは確認されているが、例年オゾンホールの大きさは9月に大きさのピークを向かえ、1640万キロ平方メートルもの大きさに広がっている。しかし今年は1000万キロ平方メートル以下まで縮小した。NASAの主任研究員であるポール・ニューマン氏は「南半球のオゾン層に関するこのニュースはとても重要である。しかし成層圏における高温化が原因でオゾンホールが縮小しただけであり、ただちにオゾン層が回復する道筋をたどっているわけではない」とコメントしている。


 成層圏は地上20kmに位置しているが、今年は例年に比べて16度も温度が高くなった。オゾン層の観測は40年間行われているが、この間では最も高い温度であるとしている。

 

 オゾンは3つの酸素原子で構成されている。地球上層部にある成層圏ではオゾン層が形成されており、皮膚がんや白内障の原因にもなる宇宙から降り注いでくる紫外線を防御している。オゾンホールは南半球のオゾン層において、冬の後半頃から形成され始める。太陽光によってオゾンホールが形成され始めるが、人工によって作り出される塩素、ブロミンが雲の分子と反応することによって冷たい成層圏を作り出し、これがオゾン層を破壊することがわかっている。この“冷たい成層圏”を作り出すもととなる雲が、今回の成層圏の高温化によって作り出されなかったことが、オゾン層現象に歯止めをかけたとされている。

 

 なおここ40年間では1988年と2002年に同じような成層圏の高温化が起きており、オゾンホールの縮小が起きている。

 

 オゾンホールの拡大は環境問題として取り上げられ、オゾンホールを破壊するフロン(クロロフルオロカーボン)は国際的に使用が禁止されている。科学者たちは2070年までにオゾン層が1980年のレベルまで回復することを目指している。今回の観測結果はオゾン層の化学現象を把握する上で重要な成果である。

 

 

 

( C ) Katy Mersmann/NASA Goddard

2019年9月8日時点の南半球成層圏におけるオゾン量。赤い色ほどオゾン量が多く、青色や紫色はオゾン量が少ない領域を表している。