10月30日

 

 NASAとESAは28日(ヨーロッパ時間)、同じ質量をもつ銀河同士の衝突により形成された、ぼんやりした宇宙の顔の画像(画像1)を捉えることに成功したと発表した。画像はハッブル宇宙望遠鏡の高解像度カメラがAM 2026-424(AMはアープ・マドーレ天体)を可視光線観測によって捉えられたものであり、2019年6月19日に撮影された。

 

 銀河同士の衝突はほとんどが正面衝突ではないものの、宇宙初期においてはあたりまえのように行われていた。地球から7億400万光年離れたところにある銀河衝突によって形成されたと考えられるアープ・マドール系もそのような銀河の1つである。このような衝突は、短時間で人目を引きつけるようなリング構造を生み出す。衝突による影響で、銀河の周りにあるディスクと呼ばれる部分におけるガスやちり、銀河外側の星たちが引き伸ばされるのである。よって銀河の真ん中のバルジと呼ばれる部分が顔の目、引き伸ばされたガスなどが鼻や顔の輪郭となり、人の顔ができあがる。

 

 我々が住む天の川銀河近隣でこのようなリング状を形成する銀河があるのは珍しいことである。なぜならばリング状を形成するには、2つの銀河がリングを形成するような正しい向きで衝突し、合体しなければならないからである。そして今回捉えられたAM 2026-424天体は目が2つ並んだ構造をしており、とても珍しい。それはこれらの目、つまり銀河のバルジが同じ大きさに見えることから、同質量である可能性が高いことからこのような構造になるのだとしている。質量の違う銀河であれば、衝突によって小さい質量の銀河が大きい銀河に吸収されることから、このような目が2つ並んだ構造にはならない。

 

 なおアープ・マドーレ天体とは、特異な相互作用をする銀河のことである。宇宙天文学者であるホルトン・アープ氏が1966年に338個もの特異な相互作用をする銀河を、目録としてまとめあげた。その後マドーレ氏とパートナーを組み、1987年には南天観測によって数千もの特異銀河をリスト化した。

 

 今回の発見は、特異な相互作用をする銀河を注意深く捉えるプログラムが搭載されたハッブル宇宙望遠鏡によって行われた。宇宙天文学者の今後の目標は、さらにハッブル宇宙望遠鏡による他の銀河を観測することによって、銀河が衝突によってどのようにして成長してきたかを捉えることにある。ハッブル宇宙望遠鏡によって捉えられた特異な銀河の構造を解析することによって、2021年打ち上げ予定のジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡の適切な観測天体を決めることができることも期待されている。

 

 

( C ) NASA, ESA, J. Dalcanton, B.F. Williams, and M. Durbin (University of Washington)

画像1:ハッブル宇宙望遠鏡によって撮影されたArp-Madore 2026-424天体