1月25日

 

 ポーランド・ワルシャワ大学のウーカシュ氏を中心とする研究チームは20日、人工衛星Gaiaデータを利用して、はくちょう座の方向に位置する特定の星(2MASS19400112+3007533)が突然増光し、1日にしてその増光の効果が消える現象を発見したと発表した。データの詳しい解析の結果、この増光は一般相対性理論で説明される重力マイクロレンズ効果によるものであり、重力レンズ天体は連星系をなしているとしている。重力マイクロレンズ効果は、観測天体と観測機器の間にブラックホールのような重力源の物体が存在することにより、観測天体からの光が曲げられて起きる現象のことをいう。

 

 人工衛星ガイアは2017年の終わりまで稼働していたが、その間の500日間にもわたる国際キャンペーンにおいて、様々な観測機器との共同作業のもと、天の川銀を中心とするたくさんの星の観測を行い、星の位置や光の強さの正確なデータをもたらした。はくちょう座の増光現象を起こす星は、ケンブリッジ大学によって主導されたガイア・フォトメトリック・サイエンス・アラーツプログラムと呼ばれるシステムによって、2016年8月に既に注目されていた。ガイア・フォトメトリック・サイエンス・アラーツはガイアの膨大な星のデータ解析を行い、特殊な増光を起こす星を見つけ出して天文学者たちの研究に役立つ情報提供を行うプログラムシステムのことである。このプログラムシステムの中で、世界中の50もの天体望遠鏡を駆使して追観測を行う、Gaia16ayeと呼ばれるプロジェクトも立ち上げられた。

 

 研究チームはGaia16ayeプロジェクトにおいて、はくちょう座の方向に位置する(2MASS19400112+3007533)星が突然増光する現象を発見したが、ガイアデータによると、増光現象を引き起こす重力レンズ天体が連星系をなしていることがわかった。この連星系はそれぞれの星の質量が太陽の0.57倍と0.36倍の星であり、地球と太陽間の距離の約2倍の距離離れているとしている。星は重心のまわりを3年未満で周回していることもわかった。ウーカシュ氏は「1日にして突然増光し、すぐに光が消える現象はとても特殊なことであり、スーパーノバや他の星においてもこのような現象は起きない」とコメントしている。また今回の重力マイクロレンズ効果について「重力マイクロレンズ天体が1つであれば、増光現象はある程度小さく安定的に起こり、光の減少もスムーズに行われる。しかし今回の場合は光の減少が急激におこり、増光現象も2度生じた(図1)。今回発見された現象はとても稀である」とコメントしている。増光現象が2度生じたことから、重力レンズ天体が連星系をなしているという結論に至った。

 

 

( C ) Adapted from Wyrzykowski et al. 2019

図1 今回発見された重力マイクロレンズ効果による増光現象

 

 

( C ) M. Rębisz

図2 重力マイクロレンズイベントのイメージ図