6月20日

 

 

 イタリアIUSSのパオロ・エスポジート氏とスペインの宇宙科学研究機関のナンダ・レア氏を中心とする研究グループは17日、人工衛星XMMニュートンによる観測により、いて座方向15,000光年の距離にあるJ1818.0−1607パルサー天体が、これまで発見されたパルサーの中でも最も若いパルサーであることを見出したと発表した。パルサーは大きな質量を持つ天体が一生を終えた後の残骸であり、今回観測対象となったJ1818.0-1607は、地球の7京倍の地場の強さを持つマグネター(*注1)である。

 

 大きな質量を持つ星が一生を終えた後にスーパーノヴァという爆発を起こし、高温、高密、強い磁場を伴う恒星の残骸を残すが、この恒星の残骸が中性子星であり、パルサーはその一種である。パルサーは大量の電磁波を放出するが、その放出頻度はパルサーの回転周期に依存しており、ミリ秒のものから年単位と様々である。ミリ秒で電磁波を放出しているパルサーはX線を放出している。

 

 J1818.0-1607は3月にNASAの人工衛星スウィフトが発見したパルサー天体であり、今回の観測で人工衛星XMM-Newtonがその電磁波をとらえた。この観測データを解析した結果、このパルサーはフランス革命などが起きた240年前にスーパーノヴァ現象によって形成されたことがわかった。これは天の川銀河において3,000個見つかっているパルサーのうちで最も若い。そしてこれまで観測されたパルサーの一種であるマグネターの中でも最も強い磁場を持つことがわかった。J1818.0-1607は直径25kmの中に太陽2個分の質量を持っているが、このサイズからは予測がつかないスピードで回転している。その回転周期は1.36秒であり、この速さが強い磁場をもたせていると考えられる。さらにJ1818.0-1607は他のマグネターとは違って、X線を放射するだけでなく、波長が0.1mmより長い電波も放射することがわかった。

 

 スペイン・バルセロナにある宇宙研究機関の主任研究員であるナンダ・レア氏は「マグネターはとても魅力のある天体であるが、今回発見された若いマグネターは特に興味ぶかい。電波とX線の両方を観測できるマグネターはパルサーの研究を行う上で非常に重要な手掛かりになる」と今後の期待についてコメントしている。

 

 一方でX線天文学者達は今回発見されたマグネターが天の川銀河の中で氷山の一角にすぎないと考えている。それはマグネターは休止状態のときと今回発見されたマグネターのように、活発に活動してX線や電波を放出する状態のときがあるからである。このことは今回発見されたマグネターが特殊なものではなく、より一般的にみつかる天体であることを示唆している。

 

 またマグネターの光の広がりについて、共同研究者であるフランチェスコ氏は、「マグネターの光具合に注目すると、マグネター天体の領域の広さが我々が目にするような一時的な光を放出する現象に影響を与えている」とコメントしている。一時的な光を放出する現象は、ガンマ線バーストや未だに謎が残されている電波バーストが含まれており、J1818.0-1607のような若くて強く磁化された天体の形成過程や現在の姿をみることでその謎に迫ることができると考えられるとしている。

 

*注1 10の10乗から11乗テスラもの強い磁場を持ち、回転エネルギーの損失率では説明できないほど明るい高エネルギー電磁波、特にX線やガンマ線を放射する中性子星のこと。これらの高エネルギー宇宙線は磁場をエネルギー源にしていると考えられている。

 

 

 

( C ) ESA/XMM-Newton; P. Esposito et al. (2020)

XMM-Newtonで捉えたSwift J1818.0−1607の合成画像。赤色の部分は2~4KeV、緑色の部分は4~7.5KeV、青色の部分は8.5~12KeVの部分を示す。

 

 

( C ) ESA

Swift J1818.0−1607の想像図