2017年2月26日

 

 国立天文台は24日、国立天文台とカリフォルニア大学の研究チームが、すばる望遠鏡により2008年1月23日に撮影した土星の中間赤外線画像を使って、リングの明るさや温度を細かく測定することに成功したことを発表した。

 

 土星のリングは無数の氷の粒子が土星の赤道上空を公転しているもの。土星のリングの主要部は、内側から順にC リング、B リング、A リングと呼ばれる濃さの異なる部分でできており、B リングとA リングとの間には“カッシーニのすき間”がある。

 

 中間赤外線では粒子が発する熱放射を観測。高温の粒子ほど熱放射が強くなるため、中間赤外線において明るく見える。中間赤外線画像から各リングの温度を測定したところ、C リングとカッシーニのすき間が、B リングとA リングに比べて高温であることを発見した。これはC リングとカッシーニのすき間は粒子の密集度が低いため、太陽光が良く差し込むことが要因として挙げられるとしている。また、これらのリングを構成する粒子は黒っぽいことも知られている。これらの理由から、C リングとカッシーニのすき間は、B リングとA リング に比べて温まりやすいために、粒子の密集度が低いにもかかわらず中間赤外線で明るく見えたと研究チームは結論づけている。

 

 また発表内容によると、カッシーニのすき間やC リングが見え方には季節変化があり、Bリング、Aリングよりも中間赤外線において暗く見えることがあるとしている。この逆転現象は、太陽や地球に対するリングの開き具合の変化によって引き起こされる。地球と同様に、土星の自転軸は公転面と大きく傾いており、太陽に対するリングの開き具合は約 15 年周期で大きく変化する。地球での季節変化と同じく、太陽光の差し込み方が変わることで粒子の温度が変わるのである。また、地球からリングを見通した時の粒子の密集度も、リングの開き具合に応じて変わる。これらの要因でリングの輝き方が変化し、結果として明るさが逆転することがあるとしている。

 

 国立天文台ハワイ観測所広報担当サイエンティストである藤原さんは、「私が取り組んでいるすばる望遠鏡の広報活動がそのまま科学成果につながり、嬉しく思います。今年5月には、また別の手段で土星の観測を行う予定です。探査機と地上望遠鏡のそれぞれの特長を活かしてデータを蓄積し、リングの性質をさらに詳しく調べていきます」と語っている。

 

 

 

(C)国立天文台

*2008年1月23日に すばる望遠鏡の"COMICS" で観測された土星の中間赤外線における3色合成画像。「カッシーニのすき間」や「C リング」が明るく見えている。色は主に温度の違いを反映し、温度が高いほど青く、低いほど赤くなる。