2017年3月4日

 

 国立天文台は2月28日、すばる望遠鏡に搭載された超広視野主焦点カメラ Hyper Suprime-Cam (HSC; ハイパー・シュプリーム・カム) で進められている大規模な戦略枠観測プログラム (HSC-SSP) の第1期データを、2月27日 (ハワイ現地時間)に全世界に公開したことを発表した。

 

 HSC は 104 個の科学データ取得用 CCD (計8億 7000 万画素からなる電子カメラ) で(*1)約 1.77 平方度の天域を一度に撮影できる超広視野カメラであり、すばる望遠鏡の主焦点に搭載されている。今回公開されたデータは「宇宙の国勢調査」とも呼ばれる大規模なデータであり、これを利用することで宇宙の起源とその進化の解明に更に一歩近づくことができるとしている。

 

 HSC-SSP 研究代表者の宮崎聡さん (国立天文台先端技術センター) は「HSC は広い天域を高い解像度で撮影できるカメラで、2014年より観測を続けてきています。今回そのデータの一部を、幅広い天文学研究に役立てていただくことを期待して、世界に向けて公開しました。ダークマターやダークエネルギー、さらには太陽系内天体から最遠方天体までの非常に幅広いサイエンスで大きな結果が得られると期待されています。現在、SSP チームでは多くの論文を執筆中で、日本天文学会の学術雑誌 (Publication of Astronomical Society of Japan) での特集号を企画しています。また、一般の方々にもご覧いただき、大望遠鏡で見た本物の宇宙を体験していただければと願っています」と、新たな研究成果への期待や社会的なインパクトについて述べている。

 

*1・・・平方度とは、全天の面積のうちある宇宙の領域の割合を表す単位のことである。1平方度は、1辺が1度の正方形の面積であり、天球全体では約41253平方度となる。

 

 

 

(C)プリンストン大学/HSCプロジェクト

*上写真はCOSMOS領域(ろくぶんぎ座方向)の3色合成画像。1000以上もの銀河が含まれていて、距離は数十億光年である。画像の中の最も遠い銀河は、宇宙誕生後10億年以内に形成されたものである。