2017年3月11日

 

 3月5日(日)、江東区の東京国際交流会館において、自然科学研究機構による天文学のシンポジウムが開催され、天文を研究する4名の方による講演が行われた。以下4名の方の講演内容。

 

・林左絵子氏(国立天文台ハワイ観測所及び総合研究大学院大学准教授)
・テーマ:太陽系外地球型惑星を見つけよう

 

 現在地球に似た資源を持つ環境の惑星探査を行うべく、すばる望遠鏡により赤外線観測による太陽系外惑星探査が行われている。地球や太陽系の成り立ちを理解する上で、太陽系外惑星系から得られる知見は貴重なものだからである。現在では点のようにしか惑星を捉えることはできないが、その発見数については急速に進歩している。恒星の数は2691個、惑星の数は3586個見つかっており、複数惑星を持つ恒星の数は603個も見つかっている。また惑星探査においては重い質量のものほど見つけやすいが、最近の観測精度の向上により、地球と同じくらいの重さの惑星が多く見つかるようになってきた。

 

 惑星の探査方法については直接撮像法、トランジット法などがある。直接撮像法はカメラで直接惑星を捉える方法であるが、カメラ精度には限界があるため、地球よりもより大きい惑星を捉えることは可能だが、地球型惑星くらいの惑星を見つけることは困難である。トランジット法とは、惑星が恒星の前を通ると少しだけ恒星から発せられる光が少しだけ暗くなることを利用した惑星探査方法である。先日見つかった地球型惑星を7個もつ”トラピスト1”については、まさにこのトランジット法により見つかった。トランジット法は長い間をかけて光を捉えることができるため、系外惑星探査においては利便性が高い。


 現在では系外惑星を点によってしか捉えることはできない。その点の情報を見つけることも重要であるが、それに加えて惑星表面の環境を捉えることにも力を入れている。惑星が恒星を通ったときに大気の表面が光るためその光の情報から大気がどのような成分であるかを調べることができる。こうして温度環境から水が存在する系外惑星を見つけることができる可能性があり、これまでに発見された系外惑星について、大気を持つ惑星には雲があったり、地球のスモッグのようなものがあったり、液体の表面がある可能性が高いものも発見されている。

 

 すばる望遠鏡においても2017年2月から系外惑星の性質を明らかにするための観測装置(スケックスAO、カリス)が本格的に始動している。また近いうちに、太陽より軽い星のまわりの惑星探査を有効に進める観測装置も立ち上がり、これまで地球上のいろいろな国の研究者・技術者との協力のもとに進められてきた努力によって、新たな世界の調査が進んでいくとしている。

 

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