3月12日

 

 ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン(イギリス)のニコラス・ラポルテ氏が率いる研究チームは3月8日、アルマ望遠鏡で銀河A2744_YD4を観測した結果、塵と酸素が発する電波の検出に成功したことを発表した。

 

 銀河A2744_YD4は地球から132億光年離れた銀河。これまでの塵と酸素が発見された銀河の最高距離は131億光年であり、1億光年更新する大きな成果である。

 

 また同研究チームは検出された塵の総量と、推定される星の誕生のペース(すなわち、星の死によって塵が作られるペース)をもとに、この銀河では134億年前から活発な星形成活動が始まったと推定している。なお塵は星の内部で作られた元素が星の死によってばらまかれる過程で作られる。138億年前にビッグバンで始まったと考えられている宇宙の中で、銀河がいつ生まれ、どのように進化をしてきたかは宇宙全体の歴史を理解する上で重要なテーマ。よってこの研究成果は宇宙最初期の銀河における星の誕生を調べる重要な手がかりを得たことを意味している。

 

 研究チームによるとA2744_YD4に含まれる塵の総質量は太陽の600万倍、星の総質量は太陽の20億倍である。またこの銀河では1年間で太陽20個分に相当するガス(主に水素)が星になっていることも明らかになった。これは、A2744_YD4における星の誕生が、我々が住んでいる天の川銀河と比べておよそ10倍活発であることを意味している。

 

これについて共同研究者のリチャード・エリス氏(欧州南天天文台/ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン)は「これくらいの星形成の勢いは、遠方にある銀河としては珍しいものではありません。むしろ注目すべきは、このペースであれば非常に短い時間でA2744_YD4のなかに塵が蓄積していくということです。」と語っている。

 

 ラポルテ氏は「銀河A2744_YD4は、単にアルマ望遠鏡で観測された最も遠い天体、ということにとどまりません。非常に大量の塵を検出できたことは、星の死によってまきちらされた塵による「汚染」がこの銀河の中ではすでに進んでいることを示しているのです。同様の観測を進めることで、宇宙初期の星の誕生をたどり、銀河における重元素(宇宙誕生直後には存在しなかった重い元素)増加の開始時期をさらに昔までさかのぼることができるでしょう。」と今回の成果の意義をまとめた。

 

 

(C) ALMA (ESO/NAOJ/NRAO), NASA, ESA, ESO and D. Coe (STScI)/J. Merten (Heidelberg/Bologna)

*上写真はハッブル宇宙望遠鏡で観測された銀河団エイベル2744。この画像の一角に、今回観測された銀河A2744_YD4が位置している。アルマ望遠鏡によって観測された塵からの光を、赤色で表現している。