4月8日

 

 国立天文台は7日、アメリカ・コロラド大学のジョン・バリー氏の研究グループが、アルマ望遠鏡によるオリオン大星雲の一部である”オリオンKL”(写真1)の観測により、生まれたばかりの星である巨大な赤ちゃん星たちが作りだした爆発のようすを詳細に捉えることに成功したと発表した。またオリオン大星雲内のガス流内部の一酸化炭素分子の高速運動とその分布がより詳しく明らかになり、これらを分析することによってガス流を吹き飛ばしている力の大きさや、より一般的に銀河内でこうした爆発現象が及ぼす影響を調べることができたとしている。

 

 宇宙での爆発は、巨大星が一生の最期に起こす超新星爆発が有名であるが、生まれたばかりの星も爆発現象を起こす。研究グループによると全ての星が生まれるときに爆発するわけではないが、赤ちゃん星が集団で生まれているオリオン大星雲では、およそ500年前に巨大な赤ちゃん星たちが互いに衝突しあったり、近くを通り過ぎたことによって、星たちを取り囲んでいた物質が宇宙空間に飛び散った可能性があるとしている。

 

 オリオン大星雲は、地球からおよそ1500光年の距離にあるガスの巨大なかたまりである。この太陽の何百倍もの質量を持つガス雲が自らの重力によってつぶれることで、星の集団が誕生する。一般的に星は生まれてしばらくの間、もともとのガスの動きに従ってランダムに動いているが、時間がたつにつれてランダムな動きはなくなり、たがいに及ぼす重力によっていくつかの星たちは次第に近づいていく。オリオン大星雲がある場所においても、およそ10万年前に星々が生まれ始め、お互いに重力を及ぼしあって、次第に近づいていた。そしておよそ500年前に、そのうちの2つの巨大な赤ちゃん星がこすれあうほどに近づいたか、あるいは衝突したことによって、まわりの赤ちゃん星やガスを吹き飛ばしたと考えられている。その結果、今回アルマ望遠鏡で撮影された、衝突地点を中心に100本を超える細長いガスの筋が作られた(写真2)。吹き飛ばされたガスの速度は、秒速150kmを超える。この爆発現象によって解放されたエネルギーは、太陽が1000万年かけて生み出すエネルギーに等しいと見積もられている。またこの爆発現象は非常に短命であり、アルマ望遠鏡で見えているような爆発の痕跡はたった数百年しか存続しないと考えられるとしている。さらにオリオンKLに見られる爆発現象はその母体となったガス雲を破壊することで星の材料が吹き飛んでしまうため、巨大ガス雲における星形成は大きく制限される可能性があるとしている。

 

 ジョン・バリー氏は今回の観測結果について「以前は穏やかだったはずの星のゆりかごで、まるでアメリカ独立記念日の花火のように、巨大なガス流が四方八方へ飛び散っているのです」とコメントしている。

 

 

*写真1 (C)国立天文台

左側はすばる望遠鏡が赤外線で撮影したオリオン大星雲であり、右上にチョウが羽を広げたような形の星雲がある。この天体は発見者であるクラインマンとローの頭文字をとって"オリオンKL"という名前で知られている。一方右側はオリオンKLの拡大写真。

 

 

 

(C)アルマ望遠鏡

上の写真はアルマ望遠鏡で捉えた一酸化炭素ガスの分布であり、その動きを色で表現している。私たちに近づく方向に動くガスを青、遠ざかる方向に動くガスを赤で表現。細長いガスの筋が何本もあり、中心からほとんど等方的に広がっている様子がわかる。