4月22日

 

 国立天文台は20日、台湾中央研究院天文及天文物理研究所(ASIAA)のチンフェイ・リー氏をはじめとする国際研究チームがアルマ望遠鏡を用いて、”ハンバーガー”のように見える大量の塵の円盤を高解像度で撮影することに成功したと発表した。*下写真(b)

 

 観測した天体は、オリオン座の方向約1300光年のところにあるHH212と呼ばれる天体。その中心にある原始星は非常に若く、わずか4万歳と推定され、太陽年齢(46億歳)の約10万分の1である。同研究チームはこのような非常に若い段階の星に塵の円盤ができていることを確認しただけでなく、円盤の厚み方向の構造や、原始星から強力なガスの流れ(ジェット)が放出されている構造も明らかにした。これらの成果は、円盤形成に関する理論的枠組みの再考を促すだけでなく、惑星形成の最初の一歩となる塵の成長を理解するうえでも重要な役割を果たす。

 

 

Credit: ALMA (ESO/NAOJ/NRAO)/Lee et al.

 (a) アルマ望遠鏡と欧州南天天文台VLTで観測された、HH212のジェット。異なる分子が放つ電波で観測したジェットをそれぞれ異なる色で表現(青:水素、緑:一酸化ケイ素、赤:一酸化炭素)。中心星近くのオレンジ色が、アルマ望遠鏡を使った過去の観測で得られた塵の集合体。(b) アルマ望遠鏡を使った今回の観測で得られた、塵の円盤のクローズアップ画像。円盤の中心面(赤道面)に暗い筋が入っていて、両側の明るい部分が挟んでいる。これは円盤の赤道面に塵が大量にあり、しかも温度が比較的低いことを示している。米印(*)で原始星の位置を示している。右下には、太陽系の海王星軌道の大きさを表示。(c) 観測結果と一致するように作られた、円盤のシミュレーションモデル。色は温度を表す。 

 

 研究チームのリー氏は「生まれたばかりの星のまわりの塵の円盤をこんなにはっきり撮影できるなんて、驚きです。円盤の構造を明らかにしたり、円盤形成の仕組みを理解したり、また星への物質供給がどのように起こっているのかを理解するために、天文学者は長い間、生まれたばかりの星のまわりの円盤を探してきました。アルマ望遠鏡の高い解像度を活かして、そうした円盤を見つけられただけでなく、その構造をとても詳細に描き出すことができたのです」とコメント。また共同研究者であるバージニア大学のツィーユン・リー氏は「理論的には、星が生まれてすぐの段階で周囲に円盤を作ることは困難です。というのも、磁場の力によって回転が妨げられ、円盤になりにくいと考えられているのです。しかし今回の観測成果を見ると、磁場が円盤形成を妨げるという効果は、実際には私たちが考えていたほど重要ではないのかもしれません」とコメントしている。