10月14日

 

 国立天文台は10日、2つの研究チームがアルマ望遠鏡によって生まれたばかりの星である原始星を観測した結果、原始星の誕生とほぼ時を同じくして原始星のまわりにおいてガスが回転する円盤、原子惑星系円盤が形成されていることを発見したと発表した。

 

 1つ目の研究チームは東京大学の大学院生大小田結貴氏と山本智教授らからなる国際研究チームであり、おおかみ座にある原始星IRAS 15398-3359をアルマ望遠鏡で観測した。その結果、この原子星の質量が太陽の0.7%と非常に低質量であることがわかった。この質量から推定される年齢は、わずかに1000年ほどだとしている。
 またCCH(炭素鎖分子)とSO(一酸化硫黄)が放つ電波を観測したところ、SOは原始星から半径数十天文単位のところに集中しており、ドップラー効果から、SO分子を含むガスが原始星の周囲を回転していることがわかった。生まれてからわずか1000年という極めて若い星のまわりに、回転するガスの円盤がすでに作られていることが初めて明らかになった。

 

 

 

( C ) ALMA (ESO/NAOJ/NRAO), Okoda et al.

アルマ望遠鏡が観測した、原始星IRAS15398-3359付近の様子。カラーと白の等高線はCCH分子の電波強度分布、黒の等高線はSO分子の電波強度分布を表している。中心の十字印のところに原始星が位置しており、図中A-Bに伸びる方向にCCH分子で見るガスが広がっていることがわかる。一方、SO分子は原始星付近に集中して存在している。CCHは数百天文単位に大きく広がるガスの分布を知るのに適している一方、SOは原始星近くで回転する円盤構造を浮かび上がらせる。

 

 2つ目の研究チームは台湾中央研究院天文及天文物理研究所のチンフェイ・リー氏らの国際研究チームであり、ペルセウス座にある原始星HH211-mmsをアルマ望遠鏡で観測した。これまでの観測からHH211-mmsの年齢はおよそ10000歳と見積もられており、非常に若い原始星である。観測の結果、原始星を取り巻く半径15天文単位ほどの円盤状構造を発見した。これは太陽系では土星がまわる軌道の1.5倍ほどの大きさに相当し、若い星の円盤としては極めて小さいものであるとしている。HH211-mmsは地球から見るとこの円盤をほぼ真横から見る位置関係になっており、円盤が厚いものであることも高解像度観測によって明らかになった。多くの原始惑星系円盤では円盤の直径に比べると厚みはずっと小さいものである。円盤が厚くなっている理由について研究チームは、できたばかりの円盤では塵がまだ赤道面上に蓄積されず円盤上空を漂っているのではないかと考えている。この研究成果は惑星の形成現場である原始星円盤の誕生と初期進化を知るうえで、重要な成果であるとしている。

 

 

( C ) ALMA (ESO/NAOJ/NRAO), Lee et al.

原始星HH211-mmsから両極方向に噴き出すガスのジェット(上)と、アルマ望遠鏡がとらえたHH211-mmsの周囲のようす。中心に原始星があり、矢印の方向にガスが吹き出している。原始星を取り巻く円盤状構造をオレンジ色で表現。原始星から噴き出すガスは、地球から遠ざかる方向に動くガスを赤、近づく方向に動くガスを青で着色している。

 

 

( C ) ALMA (ESO/NAOJ/NRAO), Lee et al.

アルマ望遠鏡がとらえたHH211-mmsの円盤のクローズアップ画像。右下は太陽系の木星・土星・天王星・海王星の軌道サイズを示している。