10月27日

 

 国立天文台は24日、カリフォルニア工科大学の惑星科学者サマンサ・トランボ氏らの研究チームがアルマ望遠鏡の観測によって木星をまわる衛星エウロパの表面温度地図を描き出すことに成功したと発表した。今回得られた温度地図は、エウロパの謎を紐解く手がかりになるとしている。

 

 エウロパは全体が氷で覆われた天体である。木星探査機「ガリレオ」などを使って行われたエウロパの観測からは、表面に無数の裂け目があることがわかっている。こうした地形は1億8000万年前から2000万年前に長年にわたって継続してきた表面活動によって作られたと考えられており、太陽系の46億年の歴史と比較すると若い地形といえる。これは、未知の地質的活動が比較的最近までエウロパに存在していたこと、あるいは現在も存在していることを示唆している。さらにその氷の表面の下には、海があるのではないかとも考えられている。

 

 カリフォルニア工科大学の惑星科学者サマンサ・トランボ氏らの研究チームは、アルマ望遠鏡を使ってエウロパ表面から発せられる電波を観測した。観測は4回行われ、エウロパの表面全体をカバーすることに成功した。この観測の解像度は0.05秒角 (1秒角は(1/3600)度) であり、人間の視力に換算すると1200に相当する。これはエウロパ表面にある200kmの大きさのものが判別できる解像度である。エウロパの直径はおよそ3000kmであるため、エウロパ表面の大まかな地図が描ける解像度である。一般的な可視光の望遠鏡の観測では、太陽光がエウロパ表面で反射した様子を調べることができる。それに対してアルマ望遠鏡のような電波望遠鏡では、エウロパ表面の物質が温まることで発せられる電波を捉える。そのため電波強度の測定から温度の推定ができる。エウロパの表面温度はもっとも高いところでもマイナス150℃を超えることはない。

 

 今回の研究では、探査機のデータから得られたエウロパの熱モデルとアルマ望遠鏡の観測結果の比較が行われた。その結果エウロパ表面の場所によって温度のムラがあることがわかった。これらは単に表面の色や模様によるものではなく、表面物質の温まりやすさが異なっていることが原因であるとしている。さらにエウロパの北半球の一部に温度が低い領域があることも明らかになった。しかしどのような理由でこうしたばらつきが生まれるのかは、わかっていない。

 

 トランボ氏は、「今回得られた画像は、エウロパ全面からの熱放射を初めてとらえることができたという点で、本当に興味深いものです。エウロパの表面を覆う氷の下には海があるのではないかとも言われており、また地質学的活動の存在も示唆されています。表面温度の地図を得たことは、氷の下に潜む活動領域の位置や広がりを知ることにつながります。」とコメントしている。

 

 

 

( C ) NASA

エウロパの表面の様子。氷で覆われており、無数の裂け目が確認できる。

 

 

 

( C ) ALMA (ESO/NAOJ/NRAO), S. Trumbo et al.; NRAO/AUI NSF, S. Dagnello; NASA/ESA Hubble Space Telescope

アルマ望遠鏡が観測したエウロパの表面。電波強度の違いは、温度の違いを表している。背景は、ハッブル宇宙望遠鏡が撮影した木星の画像。