1月30日

 

 ESAは28日、イタリア・フィレンツエ大学のグイド氏を中心とする研究チームが、人工衛星XMMニュートンによる多くの活動銀河であるクエーサーの観測により、これまでにモデル化されてきた宇宙膨張モデルの予測よりも早い時期に宇宙膨張がなされてきた証拠を見出したと発表した。これまでの宇宙膨張モデルを表す式の改良がせまられる重要な発見である。

 

 宇宙は数パーセントの元素、重力の元となる多くのダークマター、宇宙膨張を推進するダークエネルギーによって構成される。このモデルは宇宙の最果てからくる宇宙背景放射(ビッグバンが起きてから38万光年後の電磁波)のデータに基づいている。

 

 クエーサーとは大質量ブラックホールがまわりにある物質を巻き込み明るく輝く天体である。物質がブラックホールに落ちるたびに渦をまく円盤ができて、その円盤は紫外線を放射している。この紫外線はさらに電子を加熱しX線が生じる。

 

 グイド氏を中心とする研究チームはXMMニュートンのデータを解析し、70%のクエーサーは低いエネルギーのX線で輝き、残りの30%は高いエネルギーをもつ量が少ないX線で輝く2つのクエーサーのグループに分類した。そしてこれらのクエーサーからは宇宙初期の段階にある光源を解明する上で必要な、紫外線とX線の関係を明らかにすることができることがわかった。これでクエーサーを調べることによって、およそ120億年前の宇宙膨張を測定することができるようになったのである。この紫外線とX線の関係を用いて宇宙膨張を測定する方法により、これまでに予測されたモデルよりも早い時期に宇宙膨張がなされていることを発見した(図2参照)。

 

 ここで問題となるのはこれまでの宇宙膨張のモデルとなった式をどのように改良するかという点である。グイド氏は「1つの解決策として、時間が経つと共にダークエネルギーが密度進化することを式に施せばよい」とコメントしている。

 

 

 

( C ) ESA (artist's impression and composition); NASA/ESA/Hubble (background galaxies); CC BY-SA 3.0 IGO

図1 クエーサーのイメージ図

 

 

( C ) Courtesy of Elisabeta Lusso & Guido Risaliti (2019)

図2 クエーサーのデータ(黄色の丸、赤丸、青の星)をプロットしたもの。上横軸は赤方偏移で、数字が大きいほど遠い場所からきた電磁波である。縦軸は距離指数であり、見かけの等級と絶対等級の差をとったものであるが、下から上にかけて値が大きいほど明るさ的に遠い方にあることを示している。明るさが同じクエーサーについて、XMMニュートンによるデータと従来の理論モデルを比較すると、XMMニュートンによるデータの方がより赤方偏移が進んでいることがわかる。これは従来の宇宙膨張モデルよりも実際には宇宙の膨張が早い段階で進んでいることを示唆している。