1月7日

 

 コロラド大学のジェシカ氏らを中心とする研究チームは12月20日、ハッブル宇宙望遠鏡による新たな観測データによりケプラー51と呼ばれる若い惑星システム系における惑星の新たな知見を得ることに成功したと発表した。これらの3つの惑星のうち、ケプラー51bとケプラー51dの2つの惑星は、木星と同等の大きさであるにも関わらず、質量密度が木星の約1/100であることから、“スーパーパフ”と呼ばれるニックネームがつけられた。

 

 “スーパーパフ”というと朝食のシリアルみたいに聞こえるが、若くて特徴のある若い系外惑星であるケプラー51につけられたニックニームであり、その惑星は“綿菓子(Cotton Candy)”と同じ密度を持つと揶揄されている。このような惑星は太陽系に存在しない。

 

 ケプラー51システムは、恒星の周りを3つの大きな惑星が周回する惑星系であり、2012年~2014年にハッブル宇宙望遠鏡によって発見された。これらの惑星は木星と同じくらいの大きさであるが、密度は木星より小さい。この密度から推定すると、惑星は岩や水というよりは発泡スチロールと同じくらいの密度であることがわかった。惑星はかつて恒星よりはるかに離れた場所に位置していたが、だんだん恒星の近い場所に近づいている。そして現在は水素やヘリウムで構成された大気が宇宙に流出している過程であり、最終的に小さな惑星が残されると予想されている。

 

 研究チームはハッブル宇宙望遠鏡の新しいデータから、ケプラー51システムにある“スーパーパフ”のような2つの惑星の化学的性質を知る手がかりを発見した。これらの惑星は水素とヘリウムで構成された大気をもち、地球の数倍の質量もなく、木星の大きさに近いほどまで膨れあがっていることがわかった。木星ほどの大きさをもつ惑星であるが、木星の1/100ほどの質量であり、密度が低いことがわかった。

 

 なぜスーパーパフが、膨れ上がっているのかはわからないが、これらの特徴が惑星大気調査の主要なターゲットになる。ハッブル宇宙望遠鏡によってケプラー51システムのb星とd星がどのような化学組成をしているか、またはっきりと水が存在するかを調べることができるようになった。ハッブル宇宙望遠鏡は、これらの惑星が恒星を通過した際の、日没側の赤外線をとらえることによって惑星を観測している。また大気で吸収された赤外線の量も推定することができる。これらの観測によって水のような化学組成があるかどうかを調べることができるのである。

 

 驚いたことに、研究チームは両方の惑星ともにいかなる水の化学的証拠を見つけ出すことができなかった。これは高層大気にある雲の粒子が原因であるとしている。コロラド大学のジェシカ氏は、「両方の惑星ともに大きな水の吸収の特徴を発見する予定であったが、その科学的証拠を見つけることができなかったのは予想外である。しかし地球のような水でできた雲でなくとも、土星の衛星であるタイタンのように、塩の結晶や光化学スモッグで惑星大気が構成されているかもしれない。」とコメントしている。

 

 今回データから発見された雲は、ケプラー51bと51dがどのようにしてできあがったかを示す知見をも与えた。今回発見されたスーパーパフの平らなスペクトル線と他の惑星のスペクトル線を比べることによって、惑星が冷たいほど、雲ができやすいという仮説を支持することに成功したのである。

 

 研究チームはまたケプラー51システムの惑星全てが“スーパーパフ”であるわけではない可能性も発見した。惑星間重力によって惑星軌道がわずかに変化し、その変化のタイミングによって惑星質量がもたらされる効果があるのである。これはトランジット法と呼ばれる、惑星が恒星を通過するタイミングを調べることでその効果を立証できる。実際に研究チームはトランジット法を用いて惑星質量とそのシステム力学の立証に成功した。これによると、ケプラー51d星の質量が以前想定されていた質量よりももっと重い可能性(もしくはさらにパフである)があるとしている。

 

 最後に研究チームは、ケプラー51システムが生まれてから5億年しか経過していない若いシステム(私たちが住む太陽系は46億歳)であるがゆえに、“スーパーパフ”惑星は密度が小さいと結論付けた。またケプラー51システムは“スノーライン”と呼ばれる氷物質が漂うような場所で惑星がかつて形成され、これから恒星に近づく軌道運動をするだろうとしている。

 

 またこれから数十億年すると、これらの惑星が恒星に近づいていき、密度の低い大気が蒸発すると考えられている。惑星の進化モデルで考えると、ケプラー51bの場合には恒星に最も近づいたときに、1日で海王星の小さくて温かいバージョンのような星になるとしている。これは私たちが住む天の川銀河では一般的な惑星である。しかしながらケプラー51dの場合には縮んだり、大気の質量を微妙に失いながらも、密度の小さい風変わりな惑星のまま居続けるだろうとしている。

 

 “スーパーパフ”惑星はまだどのような大気で構成されているかは完全にわかっていない。これから打ち上げ予定のジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡によってその全貌が明らかになることが期待される。

 

 

 

( C ) NASA, ESA, and L. Hustak and J. Olmsted (STScI)

ケプラー51システムと太陽系の主な惑星。ケプラー51惑星は木星と同じくらいの大きさであるが、密度が小さい。またケプラー51の直接的な画像は得られていない。ケプラー51の画像の色はイメージ。