2016年11月26日(土)

 

 国立研究開発法人海洋研究開発機構(JAMSTEC)は24日、北極環境変動総合研究センター北極観測技術開発ユニットの技術主任らと共に、本年8月から10月にかけて実施した海洋地球研究船「みらい」による北極海における研究航海において、小型の自律型無人潜水機(AUV)の試作機(Retrievable Arctic Icy edge observation Vehicle、以下「RAIV」。)を用いた試験観測を実施し、日本で初めて北極海における海氷下の自律航走に成功するとともに、塩分、水温などの観測データを取得し、海氷下の映像の撮影に成功したことを発表した。

 

 RAIVは、将来的な北極海観測のための本格的なAUVの開発に向けた知見を蓄積するため、平成27年度に開発に着手した小型軽量なAUVの試作機。全長約1.9m、重量27kg程度と非常にコンパクトな形状でわずか二人で投入と揚収ができるのが大きな特長である。最大潜航深度は200m、観測および航走可能時間は最大で9日間。

 

 平成27年10月に総合海洋政策本部が「我が国の北極政策」を作成。この政策を基にAUV等を用いた国際的な北極域観測計画への参加を可能とする機能や性能を有するため、北極域研究船の建造に向けた検討を行うこととなった。しかし日本ではこれまでに北極海観測に用いるAUVの開発経験や運用経験に乏しく、簡易な技術開発と初歩的な運用経験の蓄積から開始する必要があった。様々な問題を抱えながらもJAMSTECでは①往復自航すること(位置測位はなし)、②観測装置として最低限のデータ(塩分、水温、深度)を取得すること、③海氷下の映像を取得することの3点をテーマに掲げ、平成28年度の「みらい」北極海航海における試験観測の実施を目標として、試作機の開発に着手をしていた。

 

 結果的に今回の航海において海氷下で多数のプランクトンが活動する様子を捉えると共に海氷裏の形状を捉えることに成功。課題としては海氷接近時に機体が拘束される可能性があるため、何らかの対策を講じること、低温環境に起因する機器の異常回避行動が記録されたため、改善を促していくことが挙げられている。

 

 今後、JAMSTECでは、RAIVの開発及び海氷下における試験観測から得ることができた知見や課題を活かし、引き続き本格的な海氷下観測に向けたAUVの開発を推進していくとしている。