2016年12月15日

 

 12日、山口大学は、山口大学大学院創成科学研究科の今岡照喜教授ら及び海洋研究開発機構及びジェムリサーチジャパン株式会社の共同研究グループにより、リチウムを含む新鉱物を愛媛県上島町岩城島で発見したことを発表した。発見された鉱物は著名な鉱物学者・岩石学者でもある村上允英(山口大学名誉教授)にちなみ「村上石」と命名された。

 

 国際鉱物学連合の新鉱物・命名・分類委員会により新種として2016年10月7日に承認され、11月29日にイギリスの学術雑誌「Mineralogical Magazine」にも掲載されている。

 

 「村上石」はLiCa2Si3O8(OH)という化学式で表されるリチウムを多量に含む珍しい鉱物である。この鉱物はペクトライトグループというものに属し、このような組成を持つ鉱物が存在することが予測されていた。しかし長らく発見されることはなく、今回の発見が大変貴重なものであるとされている。

 

 背景として、愛媛県上島町岩城島には特異な“エジル石閃長岩”を産することが古くから知られ、岩石学者の関心を集めていたことが挙げられる。1944年に九州大学の杉健一と久綱正典によって“エジル石閃長岩”が学術誌に報告され、1968年3月8日に愛媛県の県指定天然記念物に指定されている。その後この岩石の種類として、村上允英によって1976年には新鉱物の「杉石」が、1983年には2つ目となる新鉱物の「片山石」が発見された。片山石の発見から四半世紀以上の年月が経過し、鉱物や岩石の研究者は誰も研究対象にしなかったことなどから、同研究グループは、オンリーワンの研究を目指して“エジル石閃長岩”を再検討することとしていた。再検討にあたっては、“エジル石閃長岩”は県指定の天然記念物であるため、まずは上島町教育委員会を通じて、愛媛県教育委員会に現状変更等許可申請書を提出するところから研究が始まったとのことである。