2017年2月4日

 

 広島大学は1月31日、すばる望遠鏡の超広視野主焦点カメラ(HSC)を用いて作成した暗黒物質(ダークマター)の分布図と、距離の異なる銀河の3次元分布図を比較する新たな手法により、暗黒物質の集積の歴史と銀河の星形成が関連していることを明らかにしたことを発表した。

 

 また銀河の3次元分布を異なる赤方偏移に切り分けて、時代ごとの暗黒物質の分布と銀河の分布がどれくらい似ているかを調べたところ、30億光年先の近傍銀河団では3次元分布が暗黒物質の分布とあまり一致していないが、50億光年先の遠方銀河団においては暗黒物質の集積場所に対応する銀河が増えていることを発見。

 

 暗黒物質の集積場所においてはお互いの重力相互作用によって支配されていて、暗黒物質の巨大な集積場所が生まれる。そしてそのなかに光で見ることのできる物質(バリオン)が落ちていき、そこで活発な星形成が起こった結果、銀河団が生まれる。宇宙に点在する銀河の分布においては、ほとんど何もないところや、逆に銀河がたくさん集まっているところがある。この銀河の分布は「宇宙の泡構造」と呼ばれ、その中で多数の銀河が集中しているところは「銀河団」と呼ばれている。

 

 今回の研究ではすばる望遠鏡のような新しいカメラにより、弱重力レンズ効果(銀河の形状が銀河団の重力によってわずかにゆがめられること)を用いて宇宙の暗黒物質の分布を正確に求め、銀河の3次元分布と組み合わせることで、宇宙における暗黒物質集積と銀河進化の関連を明らかにすることに成功した。そして今回の研究手法は、これまでに試みられたことがないもので、今回の結果は、宇宙の歴史を探る新たな手法を開発したという意味でも意義深いものであるとしている。