8月26日

 

 国立極地研究所及び国立天文台は26日、総合研究大学院大学の大学院生である藤原康德氏と中村卓司教授らの研究グループが、2014年12月の「ほうおう座流星群」の光学観測結果から、流星群の親天体であるBlanpain彗星が20世紀初頭には地球から彗星として観測されなかったものの、弱いながらも彗星として活動し、流星群のもとになるダストを放出していたことを明らかにしたと発表した。これは”ダスト・トレイル理論”(彗星の活動度の変遷を、その彗星を親天体とする流星群の活動から推定するという手法)と呼ばれる予測方法が初めて成功した事例になった。この結果は、彗星、小惑星、流星体等の太陽系小天体の相互関係や進化を研究する上で重要な知見になるとしている。

 

 2014年12月、藤原氏らの研究グループは、流星群の輻射点位置や出現時刻などの予報から、観測条件が良好な米国ノースカロライナ州に遠征して、7台の高感度ビデオカメラと2台のデジタルカメラで観測を行った。9台のカメラで、総計138個の流星を観測し、その内29個が「ほうおう座流星群」に属すると判断していた。

 

 流星群は、ひとつの親天体から放出された流星体の帯(ダスト・トレイル)が、地球の大気に飛び込むものである。親天体のほとんどは彗星であると考えられている。彗星は、直径数kmの核と呼ばれる氷と岩のかたまりであり“汚れた雪玉”とも呼ばれる。彗星から放出された流星体は、親天体の彗星とほぼ同じ軌道で運動をしつつゆっくりと彗星から離れ、ダスト・トレイルとして広がっていく。近年ダスト・トレイル理論が高度になり、流星体が親天体の彗星から、いつどのような速度や方向に放出されたか等の条件を仮定してモデル計算をすることで、流星群の出現状況の再現や出現の正確な予報ができるようになっていた。

 

 今回観測対象となった「ほうおう座流星群」の親天体であるBlanpain彗星は、1819年に発見された公転周期5.32年の彗星である。この彗星が20世紀初頭に、わずかでもダストを放出していたならば、このダストが2014年12月に地球に遭遇して流星群として出現することがダスト・トレイル理論により予報された。つまりこの天体が20世紀初頭に彗星として活動していたかどうかは、2014年に流星群として観測されるかどうかで分かることになっていた。実際に2014年12月に流星群が観測されたことで、Blanpain彗星が20世紀初頭にダストを放出していたという結論に至ったわけである。

 

 藤原氏は今後の抱負について「今後この手法(ダスト・トレイル理論による流星群の出現予報)を、母天体が彗星としての活動をほとんど示さない流星群に活用し、太陽系小天体の変遷を明らかにしていきたい」とコメントした。

 

 

(C)国立天文台

「ほうおう座流星群」の流星(画面左下)。2014年12月1日現地時間21時15分39秒(世界時:2時15分39秒)に出現したもの。画面中央から右下の明るい天体は月。