10月21日

 

 JAXA、国立天文台、国内外の大学生らの国際共同研究チームは18日、日本の月周回衛星「かぐや」に搭載された電波レーダ、月レーダサウンダーで取得したデータを解析し、月の火山地域の地下、数10m~数100mの深さに、複数の空洞の存在を確認したと発表した。確認された地下空洞の一つは、「かぐや」が発見した縦孔を東端として、西に数10km伸びた巨大なものであり、溶岩チューブのような形(東西方向に川のように蛇行した空洞)をしている。今回の研究成果は、月の起源と進化の様々な課題を解決する手がかりとなり、月における基地建設においても最適の場所になりうることを示した点で、非常に重要な成果であるとしている。

 

 2009年、日本の月周回衛星「かぐや」に搭載されていた地形カメラの画像データによって、マリウス丘と呼ばれる場所に、通常のクレータとは異なる直径深さ共に50mの直径の縦孔が発見された。縦孔は科学者の間で地下空洞が開いたものであるという仮説が立てられた。米国によって2009年に打ち上げられたルナー・リコネサンス・オービターのカメラによる斜め観測によって、その縦孔の底には数10m以上の空間が広がっていることが確認され、地下空洞の存在が現実実を帯びることになったのである。(図1)。そして今回の研究成果に至った。

 

 

(C) JAXA

(図1) マリアナ丘の縦孔

 

 今回研究チームはマリウス丘で発見された縦孔付近の反射波データを調べることによって地下空洞の存在を確認。さらに、地下空洞の存在を示す反射波データが、アメリカの探査機グレイルの重力場観測によって見出された低密度地域に一致していることが確認された。(図2)。よってこの地域に、未崩壊の地下空洞(溶岩チューブ)が存在していることが確実になったといえるとしている。

 

(C) JAXA

(図2) 丸印の色(ΔPrb)は、月面からの反射波と地下からの反射波強度差を表し、紫色に近いほど強い反射を生じる面、つまり天井あるいは床をもつ未崩壊の地下空洞が存在している可能性があることを示している。 T1は縦孔の東3kmほどに近接した測点で、地下からの強い反射が見られた測点。また、T1の西の溶岩の流れによって形成された溝(リルと呼ばれる)に沿って位置するT2~T4においても、T1とほぼ同じ地下からの強い反射が見られた。つまり、縦孔を東端として、T1~T4に沿って西に延びる未崩壊の地下空洞が存在すると示唆される。背景の薄い赤い領域は質量密度が低く、薄い青い領域は質量密度が高いことを示している。質量密度が低い領域にT1~T4が見られる。

 

 月の地下空洞は、過去に月に磁場があった証拠や、月に取り込まれた揮発性物質(たとえば水)などが見つかる可能性があるなど、様々な科学的な課題の解決が期待できる場所として重要である。また空洞が地下にあることで月面の厳しい環境(微隕石の衝突や強い放射線)から機器や人を守れることや、空洞内の温度が比較的安定していることから、将来の月面基地建設地の候補として挙げられている。研究チームは、レーダサウンダーによる反射波データと他の観測データの相互関係や、地下空洞の反射波パターンのシミュレーション解析から、月の地下空洞の検出をさらに進めていき、将来の地下空洞探査、月面基地建設に役立つ情報提供に努めていくと、今後の抱負を述べている。