10月28日

 

 国立天文台は24日、アルマ望遠鏡の観測によって若い星オリオン座V1247星のまわりの塵(ちり)の環の姿を写し出すことに成功したと発表した。この画像(下図1)では、2種類の環が写っており、内側の環は星をぐるりと取り巻くくっきりとした環、外側の環は三日月形をした淡い環になっている。この2種類の環は惑星形成シナリオを考える上で貴重な資料であり、名古屋大学の深川美里准教授らの国際研究チームは、この画像と従来考えられていた惑星形成シナリオをコンピュータシミュレーションした結果を比較し、よく一致していることを確認した。

 

 

(図1) (C) ALMA (ESO/NAOJ/NRAO)/S. Kraus (University of Exeter, UK)

 

 2種類の環の間の暗く見えるところは、塵が少なくなっている。この隙間は、この場所に惑星ができている可能性を示している。惑星ができると、その重力によって軌道の両側に圧力の高い部分が現れ、まるで船のへさきが水を切って進むように、惑星の軌道に沿って隙間ができると考えられている。このとき塵が両側に掃き寄せられるが、その状態は数百万年にわたって続く。そして塵が密集した状態が保たれることによって、塵が合体成長しやすくなると考えられている。こうした現象は「ダストトラップ」と呼ばれる。

 

 国際研究チームは画像を詳細に分析。内側の環の明るさは均一ではなく、画像左下がやや明るくなっているため、まわりより塵がたくさん集められていることに気づいた。またこの環の左下の部分もダストトラップではないかと考えている。こうした構造は、塵の環のなかで惑星が作られていく様子を計算したコンピュータシミュレーションとよく一致しているのだという。

 

 これまでの惑星形成の研究における大きな問題は、小さな塵が中心星に落下することなくどのようにして合体成長して惑星になるかということであった。ダストトラップが実際に発生していれば、圧力によって塵は円盤内の特定の場所に掃き集められるので、星に落下することなく成長することができる。よってダストトラップを捉えた今回の画像は、問題解決に向けた大きな鍵となる。

 

 研究チームの一員である名古屋大学の深川美里准教授は、「三日月があるに違いないと思い、この天体に狙いを定めましたが、リングまで出てくるとは予想していませんでした。遠い星の円盤でありながら、これまでで最も鮮明なダストトラップの画像が得られ、シミュレーションとの比較が格段にやりやすくなったと感じます。長年の謎である塵から惑星への成長過程が、近い将来、明らかになると期待しています。」とコメントしている。