2月10日

 

 国立天文台は6日、岡本特任助教および桜井誉教授が太陽観測衛星「ひので」の可視光望遠鏡による観測データから、太陽観測史上最大となる6250ガウス(625ミリテスラ)の磁場強度を持つ黒点を発見したと発表した。これは一般的な黒点磁場の2倍の強さであり、強磁場を示す領域が黒点内の暗くない部分(暗部以外)に位置するという特異な性質を持っている点で観測史上かつてない発見であるとしている。

 

 1908年にジョージ・ヘイルによって黒点に強い磁場が存在することが明らかにされた。磁場の持つエネルギーは太陽表面や太陽大気コロナにおける様々な活動の源であり、特に黒点周辺ではフレアやプラズマ噴出などの激しい現象がしばしば引き起こされ、地球環境にも影響を与える。

 

 これまでにも暗部以外で局所的に強い磁場が観測されたことがあるが、その成因については全くの謎であった。今回「ひので」の5日間に渡る安定した連続観測により黒点の発展過程が詳細に捉えられた。その結果研究チームは、この強磁場が黒点暗部から伸びるガスの流れが別の暗部を強く圧縮することでもたらされていると結論づけた。強磁場形成のメカニズムは以下の通りである。まず、強磁場領域は太陽の明るい部分と暗部の境界付近に位置し続けている。そしてこの構造全域に渡って磁場の向きに沿ったガスの水平流が存在し、その流れの先は常に強磁場領域に向いている。つまり強磁場領域を含む明るい構造は一方(S極)の暗部に属する半暗部(黒点よりもやや明るい部分)と見なすことができる。そしてこの水平流が他方(N極)の暗部境界を強く圧縮し、暗部の最大値でも 4,000ガウス程度しかない黒点の磁場を 6,000ガウス以上に強めている。

 

 国立天文台は、この研究成果が黒点の形成・進化メカニズムや、それに伴うフレアなどの活動現象を理解する上で重要な知見をもたらすことを強調した。

 

 

(C) 国立天文台

太陽観測衛星「ひので」が捉えた最強磁場を持つ黒点。連続光による姿(上)とその磁場強度(下)。寒色から暖色にかけて高い磁場強度を表し、特に赤で示された場所に 6000ガウス(600 ミリテスラ)を超える磁場が存在している。つまり暗部と暗部の間の半暗部(やや明るい部分)に強磁場が存在することを示している。

 

 

(C) 国立天文台

強磁場を作るメカニズムの模式図。右側(S極)からの水平流が左側(N極)の磁場を圧縮することで、磁場が強められる。地球における地殻の沈み込みをイメージするとわかりやすい。