5月15日

 

 東北大学の鹿山助教授を中心とする共同研究チームは、4月27日、月隕石から「モガナイト」と呼ばれる、生成する過程で水が不可欠となる鉱物を発見したと発表した。この研究成果は月の地下に大量の氷が眠っている可能性があることを示唆するものであるとしている。

 

 モガナイトは石英と同じ二酸化ケイ素(SiO2)を主成分とする鉱物で(一方で結晶構造は異なる)、過去の合成実験により高い圧力条件(>100 MPa)でアルカリ性のケイ酸水溶液(H4SiO4)から沈殿してできることが判明している。その沈殿反応(SiO2 (s) + 2H2O ↔ H4SiO4 (aq))には水が不可欠である。

 

 これまでに月周回衛星(エルクロス等)の観測により月極域(北極と南極)付近に大量の水が観測されていた。しかし月のどの深さにどれほどの水の量が存在するかどうかは未解明の問題である。

 

 そこで共同研究チームは巨大天体の衝突で宇宙空間に放出された後に地球にやってきた月の岩石である月隕石に注目し、13種類の月隕石に対して詳細な分析を行った。月隕石から月の環境がどのようになっているのかを調べようと試みたわけである。その結果NWA 2727と呼ばれる月隕石からモガナイトを発見した。モガナイトの成因となる月の水は、水を豊富に含む天体が月のプロセラルム盆地(ウサギにみえる影模様)に衝突することで供給されたことがわかった。

 

 また、月の水は太陽光で熱せられた表面では蒸発してモガナイトを作るが、低温である地下数mでは氷として残ると考えられ、その氷の埋蔵量は岩石1立法メートルあたり18.8リットルにも達することから、月の地下に大量の氷が眠っている可能性が示された。

 

 今後は月に人類が月に居住する上で欠かすことのできない貴重な水資源(飲料水や水素燃料)があるかどうかを、現在検討中の月探査計画で明らかにしていきたいとしている。また未調査の月隕石やアポロ・ルナ計画で回収された月の試料に対して微小部分析を行い、そこから水や氷の痕跡を探る研究を行い、現在検討されている月の探査計画の推進に繋がる科学データを取得していく予定である。

 

 

 

 

(C)東北大学

月の水は、太陽光で熱せられた表面では蒸発してモガナイトを作り、地下には氷として残る。