6月9日

 

 東アジア天文台は5日、国際共同研究チームがジェームズ・クラーク・マックスウェル電波望遠鏡を用いて、わし星雲M16中心部の柱状の形をしたガス塊、「創造の柱」を観測した結果、磁力線の向きが柱に沿って平行に存在し、周囲の星雲内の磁場とは違う向きになっていることが明らかになったと発表した。

 

 わし星雲M16は、太陽よりもずっと重い星が誕生している場所である。生まれたての重い星は紫外線を放ち、自分を生み出した星雲に影響を及ぼす。星雲に生じた波によって、星雲内には柱状などの複雑な構造が作られる。しかし、柱状の構造がどのように形成され成長していくか、観測的にも理論的にも明らかになっていなかった。

 

 ハワイ島マウナケア山頂付近に設置されたジェームズ・クラーク・マックスウェル電波望遠鏡(James Clerk Maxwell Telescope、JCMT)では、恒星の誕生現場における磁場を観測するビストロサーベイ(BISTRO survey)が進められている。今回、ビストロサーベイでわし星雲の「創造の柱」を観測したところ、内部の磁場構造が初めて明らかになった。創造の柱におけるガスから放出されるサブミリ波は、磁力線から垂直方向に放出されるため、サブミリ波を観測することにより磁力線を描き出すことができるのである。

 

 柱の成長具合や寿命は、磁場によって大きく左右される。観測された磁力線の向きは、弱い磁気を帯びたガスが圧縮されて柱状になったという仮説を支持するものになったとしている。また推定された磁場の強さは、柱が圧力や重力によってつぶれるのを防ぐのにちょうど必要な程度であり、「創造の柱」は、磁場の助けによってその形を保ち続けていることが示唆されると結論付けた。

 

 

 

 

( C ) NASA/ESA/Hubble Heritage Team (STScl/AURA) /J.Hester,P.Scowen (Arizona State U. )

「創造の柱」の磁場構造。磁場の向きは、柱に沿った方向にそろっている。

 

 

( C ) 東アジア天文台

「創造の柱」の形成シナリオ

( a )  光子の流入が星雲のイオン化を促していき、イオン化している面ができる。そのイオン化している面は磁場に垂直に動いていて、ガス密度の濃い部分ではイオン化が遅れていくことで波が生じる。 (b) 星雲に生じた波によって、星雲内には柱状の構造が作られる。 ( C ) 柱状のガスは、まわりからのガスの圧力や自己重力に対抗する磁場エネルギーをもつため、その形状を保つ。

黒い線はイオン化している面、灰色の線は磁力線を表す。赤い矢は光子の流入、黒い矢は磁力、緑の矢はガスの熱による圧力を表す。