6月16日

 

 国立天文台は15日、2つの国際研究チームが、いて座方向330光年にある若い星HD163296をアルマ望遠鏡によって観測した結果、この星のまわりに3個の誕生直後の惑星が存在する確かな証拠を発見したと発表した。若い星を取り巻くガスの円盤が惑星の重力によって乱されているようすを調べるという、新たな惑星探査方法を用いている。

 

 HD163296は、太陽の約2倍の質量をもち、年齢は太陽の1/1000ほど、およそ400万歳と見積もられている。

 

 国際研究チームは惑星探査を行うために、若い星のまわりの円盤内のガスに含まれる一酸化炭素分子が放つ電波に着目した。一酸化炭素分子は特定の波長で電波を出す。一酸化炭素が動いていると、ドップラー効果によりその波長がわずかに変化する。この波長の変化をとらえることで、若い星のまわりでガスが動いているようすを調べることができる。もし円盤の中に惑星があるとすると、惑星の重力で周囲のガスの動きが乱されるはずであり、これが惑星発見の決め手になると考えた。この新たな方法による惑星探査では、惑星の質量をより正確に求めることができると共に、惑星が実際にはないのにあると誤認してしまう可能性も低くなるとしている。

 

 ティーグ氏(ミシガン大学)らを中心とする研究チームは、中心星から120億キロメートルおよび210億キロメートルのところに、またピンテ氏(オーストラリア・モナシュ大学、フランス・グルノーブル惑星天体物理学研究所)らを中心とする研究チームは、中心星から390億キロメートルのところにそれぞれ惑星があることが示唆されると発表した。これは、太陽と地球の距離のそれぞれ80、140、260倍の位置に相当する。太陽系でもっとも外側の惑星である海王星の軌道の大きさが地球軌道の30倍であることと比べると、HD163296の惑星は星からとても遠いところを回っていることがわかる。これらの惑星の質量は、木星程度から木星の2倍程度と見積もられている。

 

 今回の発見に関わった国際研究チームは、この手法をさらに洗練させて他の若い星にも適用していきたいと今後の抱負を述べている。また、惑星が形作られていく間にどんな成分のガスが惑星に届けられるのかの謎にも答えられるようになるかもしれないと期待を寄せている。

 

 

 

( C ) ESO, ALMA (ESO/NAOJ/NRAO); Pinte et al.

アルマ望遠鏡が観測した若い星HD163296を取り巻くガスの円盤の一部。ガスは星のまわりをまわっているため、ガスが放つ電波はドップラー効果を受ける。このため、異なる速度で動くガスからの電波が、波長が少しずつ異なる電波となって届く。この画像は、ドップラー効果を利用してある特定の速度で動くガスの分布だけをあらわしたもの。画像中央やや左側に、ガスの分布に「く」の字状の明らかな折れ曲がりがあり、惑星が確かにこの近くに存在しているという証拠になる。

 

 

 

( C ) ESO, ALMA (ESO/NAOJ/NRAO); A. Isella; B. Saxton (NRAO/AUI/NSF)

アルマ望遠鏡が撮影した、HD163296のまわりの円盤。この画像では、塵の分布をあらわしている。