6月24日

 

 台湾中央研究院天文及天文物理研究所/アリゾナ大学のロビン・ドン氏らの研究チームは21日、アルマ望遠鏡による若い星MWC758の観測結果から、この星を回る塵の円盤にさまざまな構造があることを発見したと発表した。塵の円盤には渦巻き腕や塵のかたまり、少しひしゃげた形に開いた円盤の穴といった構造が見つかり、これらは円盤内で形成されつつある惑星によって作られている可能性があるとしている。

 

 

( C ) ALMA (ESO/NAOJ/NRAO), Dong et al.

アルマ望遠鏡が波長0.87mmのサブミリ波で観測した、若い星MWC758のまわりの円盤。中心部には大きな楕円形の穴が開いており、その外側の円盤には3重のリングと2か所の塵のあつまり、渦巻き腕などいろいろな構造が写し出されている。

 

 今回観測対象となったMWC758は、おうし座の方向に地球からおよそ500光年離れた場所に浮かぶ若い星。2013年にすばる望遠鏡の近赤外線観測によってMWC758の円盤に2本の渦巻き腕が発見された。ドン氏らは2015年に発表した論文の中で、木星より重い惑星が円盤のすぐ外側に存在すれば、この渦巻き腕が作られうると論じている。また別の望遠鏡による電波観測では、円盤の中央部に大きな穴が開いていて、円盤部分には塵のかたまりが2つ存在することが明らかになっていた。

 

 様々な観測結果が発表される中で、2017年11月にアルマ望遠鏡による観測が行われた。その結果、円盤の中心部に開いている穴が円形ではなく、楕円形をしていることがわかった。また、星の位置が楕円の焦点のひとつに合致していることも明らかになった。さらに、すばる望遠鏡で発見された2本の渦巻き腕のうちの1本が、アルマ望遠鏡でも観測された。

 

 そもそも惑星誕生の基となる原始惑星系円盤は、2000年代前半から詳細な観測が行われるようになっていた。数十個の円盤の観測の結果、円盤には隙間や環、塵の分布の偏りや渦巻き腕などさまざまな構造があることがわかってきていた。この構造の原因について天文学者たちは様々な議論を展開。ひとつの説としては、円盤内で出来上がりつつある惑星の重力によっていろいろな構造が作られるというものである。他には、例えば円盤中央部に開いた穴は星からの光によって円盤が蒸発することでできたという考え方や、特別な条件下では円盤の影によって渦巻き模様が現れるはずだという説も唱えられた。

 

 原始惑星系円盤の構造に関する様々な説が提唱されていた背景の中、今回のアルマ望遠鏡による観測結果について、共同研究者である工学院大学の武藤恭之氏は、「アルマ望遠鏡による観測で、これらの構造が惑星によって作られたという重要な証拠が得られました。例えば、円盤にあいた穴が楕円形をしていて焦点の位置に星があるということは、ケプラーの第一法則に従ったものだといえます。これは、穴が力学的な要因によってできたことを示しています。つまり、惑星の重力によるものである可能性が高いのです。」とコメント。円盤の穴は中心星からの光によって円盤が蒸発するという考え方もあったが、光は星から対称に出ていくので、楕円形の穴を作ることはできず、今回の観測結果により否定されたことになる。

 

 「若い星を取り巻く円盤にはいろいろな構造が見つかっていますが、いったいどうやって作られたのか。これは、10年以上も天文学者たちを悩ませ続けている謎です。私たちは、MWC 758の円盤に驚くほど豊かな構造があることを見つけました。そしてこの発見はいろいろな構造の起源について重要な示唆をしてくれます。」と、ドン氏はコメントしている。