すばる望遠鏡が捉えた合体銀河NGC6240から吹き出す巨大銀河風

 

 

(C) 国立天文台 2014年4月30日撮影

 

 上写真では約3億光年彼方にある合体銀河NGC 6240と、その周りに広がる銀河風(赤いフィラメント状の構造)の様子が捉えられている。NGC 6240は我々が住む銀河系とほぼ同じぐらいの大きさの渦巻銀河が二つ合体した銀河で、もはや合体前の姿を留めておらず、全体が奇妙にねじくれた形である。

 

 一般的には、大きな銀河同士が互いの重力で引きあって、最後には衝突・合体してしまうことがある。このとき、重力相互作用によって銀河の中のガスが支え(角運動量)を失って合体銀河の中心に落ち、銀河の中心部で大量の星が一気に作られる。この激しい星生成(スターバースト)で生まれた大質量星からの強力な放射と大量の超新星爆発が、銀河の外にガスを放り出す。これは銀河風(スーパーウィンド)と呼ばれる。銀河風が吹くと銀河中心に溜まった星の生成材料となるガスが吹き飛ばされ、星生成が止まる。銀河風が止むと、またガスの集積が始まり再び銀河は星を作り始めるかもしれない。このように銀河風は銀河における星生成と深く関わっている。すばる望遠鏡が捉えたNGC 6240においては、銀河風の構造を詳しく解析することによって銀河が合体し始めてから少なくとも3回の大きな星生成活動が起こったことが明らかになっている。

 

 NGC 6240 は、へびつかい座の方向約3億5千万光年かなたにあるスターバースト銀河であり、その星生成率は銀河系の25倍~80倍程度であると推定されている(我々の住む銀河系 (天の川銀河) の星生成率は、銀河系全体で1年間に太陽が一つ生まれる程度だと考えられている。)。非常に特異な形態より、二つの渦巻銀河が合体途上にある天体だと考えられている。銀河合体によって引き起こされたスターバーストによって、NGC 6240 は赤外線で明るく輝いており、その総放射エネルギーは太陽の1兆倍近くである。NGC 6240 は、銀河合体とスターバーストの関係を詳しく調べ、これらの現象が銀河進化に与える影響を解明するための格好の研究対象である。