7月8日
図1 ( C ) KPNO, NSF's NOIRLab, AURA, Alyssa Pagan (STScI).
JWSTの中間赤外線観測装置(MIRI)によって撮影された地球から2200万光年先にあるNGC6946の姿。白丸で囲われた場所に超新星が存在する。
図2 ( C ) NASA, ESA, CSA, Ori Fox (STScI), Melissa Shahbandeh (STScI), Alyssa Pagan (STScI).
NGC6946渦巻銀河において捉えられた超新星SN 2004et、SN2017eawの姿。JWSTのMIRI(中間赤外線観測装置)によって観測され、10、15マイクロメートルの光は青色、11.3、18マイクロメートルの光は緑色、12.8、21マイクロメートルの光は赤色で示されている。
ジョンズ・ホプキンス大学のMelissa Shahbandeh氏を中心とする研究チームは6日、ジェームズ・ウエッブ宇宙望遠鏡(以下JWST)を用いて、地球からおよそ2200万光年離れた場所にある渦巻銀河NGC6946(図1)を観測した結果、この銀河に含まれる2つの超新星(SN 2004et、SN 2017eaw)において大量の塵が放出されていること(図2)を確認したと発表した。さらに塵の量を見積もることにも成功し、SN 2004etには地球のおよそ5000倍の塵の量があることが判明した。初期宇宙において超新星が塵の供給に重要な役割を担っていることを示す重要な研究成果であるとしている。
宇宙の塵は宇宙におけるあらゆる天体を構成する重要な物質であり、特に惑星が生まれるには必須な物質である。星の死によって宇宙に広がることが予想される塵が、新たな星やその星まわりの惑星が誕生するのに欠かせないと考えられていた。しかしこれらの塵がどの星からやってきたものかどうかを確認することがこれまでできていなかった。ここで科学者たちは超新星からこれらの塵がもたらされた可能性があるとの予測をたてた。超新星は星が生涯を終えるときに起きる爆発現象であり、超新星によって残されたガスが広がり冷えることによって、塵ももたらされることが予測された。
今回研究チームは超新星から塵が放出されていることを確かめるべく、地球からおよそ2200万光年離れた場所にあるNGC6946渦巻銀河をJWSTの中間赤外線観測装置(MIRI)によって観測することとした。その結果、2つの超新星において塵が放出されていることを確認することに成功した(図2)。さらに超新星の初期における塵の量を見積もることにも成功し、SN 2004etは地球の5000倍の塵の量あることが判明した。これだけ多くの塵が地球から遠く離れていて若いNGC6946渦巻銀河に含まれることが確認されたが、太陽くらいの大きさの星を作るには塵の量が不十分であるとしている。
しかし大きな課題が残されたままである。それは超新星によって起きる衝撃波によってどれくらいの塵の量がその場所にとどまり続けられるかどうかということである。多くの量の塵が超新星から放出されていることが確認されているため、多くの塵が衝撃波を乗り越えることができると研究チームは推測しているが、具体的にどれくらいの量が残り続けられるかどうかは判明していない。またJWSTによって多くの塵が超新星から放出されていることが確認されたが、MIRIによって観測することができない、これらよりももっと冷えた塵が残されている可能性もあるとしている。
研究チームの一人であるOri Fox氏は「今回の研究成果によって超新星のコアから放出されている塵が見つかったことはとても興味深い。近い将来にこれらの塵が発見されたことを活かした研究を行っていく予定である」と今後の抱負について述べている。