8月12日
図1 ( C ) NASA, ESA, CSA, D. Coe (AURA/STScI for ESA), Z. Levay.
ジェームズ・ウエッブ宇宙望遠鏡によって撮影されたくじら座方向約130億光年先にある銀河団、WHL0137-08(写真左)。これらの銀河は重力レンズ効果によって増光されている。写真右は銀河団の一部を切り取ったものであるが、ここにエアレンデルと名付けられた星が存在する。エアレンデルからは1時から7時方向に赤い線が走っており、点が写っていることもわかる。この点は、今回の観測によって若い星や、星団である可能性があることが明らかになった。
NASAは9日、ジェームズ・ウエッブ宇宙望遠鏡(以下JWST)の近赤外線観測装置(NIRCam)によって撮影されたくじら座方向にある遠方銀河団、WHL0137-08の姿を公開した(図1)。この銀河団は重力レンズ効果によって像が歪み、増光されている。特に銀河団の一部を切り取った写真右側は、この銀河団において一番増光された箇所を写したものである。この中には昨年ハッブル宇宙望遠鏡によって撮影され、最遠方を記録した星が写っており、「エアレンデル」と名付けられている。今回の観測によって、エアレンデルに比較的温度の低い伴星が存在する可能性があることが明らかになった。さらにエアレンデル付近に若い星や、星団が存在する可能性があることが明らかになった。
エアレンデルは古英語で明けの明星という意味である。エアレンデルは宇宙誕生後10億年という初期宇宙において誕生した星である。昨年ハッブル宇宙望遠鏡によって初観測がなされたが、今回のJWSTによる観測によって、エアレンデルが太陽質量の2倍以上あるB型星に分類され、太陽光度の100万倍以上の明るさで輝いていることがわかった。またNIRCamの詳細な観測により、比較的温度の低い伴星が存在することが示唆されるとしている。
またエアレンデルから赤い弧状の点線が伸びているが、この赤い線上に星や星団が存在し、重力レンズ効果によって光が伸ばされた結果、弧状に写っているものである。今回の観測によって、この線上に若い星の形成領域と比較的年老いた星団が存在する可能性があることがわかった。エアレンデルの右上に伸びる線上に一つの点があるが、これは年齢が500万年ほどの若い星であるとしている。またエアレンデルから左下に伸びる線上に2つの点があるが、これらは年齢が1000万年ほどの星団であるとしている。天文学者たちによると、この星団は重力的に束縛されており、今もなお存在する可能性があると推測している。
今回の観測データを詳しく分析することによって、天の川銀河に存在する球状星団が遠い昔、130億年前にどのような姿をしているのかが解明されることが期待されている。