これまでにない強大な磁場を持つマグネターとなりうる星

8月19日

 

 

 

図1 ( C ) ESO/L. Calçada

今回強大な磁場を持つことが判明した、一角獣座方向約3000光年の位置にあるHD 45166のイメージ図。43000ガウスというとても強大な磁場を持ち、星から吹く恒星風をもとらえてしまうほどである。HD 45166は連星系を成していることが知られていたが、今回の観測によって伴星である青い星が、これまでに報告されていたものよりも遠くの軌道を周回していることもわかった。

 

 オランダ・アムステルダム大学のTomer Shenar氏を中心とする研究グループは17日、世界中にある宇宙望遠鏡の観測データを解析した結果、まだ生涯を終えていない主にヘリウムからなる星・HD 45166が、これまでにない強大な磁場を持つマグネターとなりうることを見出すことに成功したと発表した。マグネターは通常、生涯を終えた星が磁場を強めることによって形成される天体であるが、その形成過程を理解するための重要な観測結果であるとしている。

 

 マグネターは宇宙の中で一番磁力の強い天体である。これまでに、生涯を終えた密度の高い星がマグネターとなり、とても強い磁場を出している姿が捉えられてきたが、どのようにして形成されてきたか理解するまでには至っていない。

 

 また今回観測対象となったHD 45166は一角獣座方向約3000光年ほど離れた場所にあり、これまで100年に渡る観測が行われている。この星が太陽の数倍程度の質量を持ち、主にヘリウムで構成され連星系を成していることが知られていたが、どのようにして形成されてきたのかはこれまでのところよくわかっていなかった。

 

 Tomer Shenar氏は様々な論文を読んでいるうちに、HD 45166がもしかしたらマグネターになるほどの強大な磁場があるのではないかと考えるようになり、今回様々な宇宙望遠鏡を用いて観測を行うこととした。

 

 2022年2月にカナダ・フランス・ハワイ宇宙望遠鏡によってHD 45166の磁場を観測することに成功した。その後ESOのFEROSと呼ばれる多波長観測による観測データを解析することとした。その結果HD 45166は43000ガウスものとても強い磁場が存在することが判明した。これまでに発見された巨大星の中で最も強い磁場を持つとしている。ちなみに太陽磁場(黒点)の磁場強度は3000ガウス程度である。また星の表面は、地球のおよそ10万倍もの磁場の強さであることがわかった。

 

 通常であればマグネターは星が生涯を終えて自己重力でつぶれた後にできる天体であると考えられていたが、今回の観測結果は、星が生涯を終えなくともとても強い磁場を持つことを示した。またマグネターの成り立ちを説明する上でとても重要な観測結果であるとしている。なお通常のマグネターはHD 45166の10億倍以上の磁場の強さを持っているが、研究チームの試算によると、HD 45166は今後生涯を終えて自己重力によってつぶれていき、強いコアを持つようになると、100兆ガウスもの強い磁場を持つようになるとしている。この強大な磁場は宇宙で最大の磁場を持つ天体である。また今回の観測結果からHD 45166が2つの主にヘリウムからなる星が合体することによってできたことを示唆するとしている。