9月2日
図1 ( C ) NASA, ESA, CSA, M. Matsuura (Cardiff University), R. Arendt (NASA’s Goddard Spaceflight Center & University of Maryland, Baltimore County), C. Fransson (Stockholm University), and J. Larsson (KTH Royal Institute of Technology). Image Processing: A. Pagan.
JWSTの近赤外線カメラ・NIRCamが捉えた超新星・SN 1987Aの姿。写真中央には2つの三日月が並んだ鍵穴構造があり、そのまわりには超新星でできた2つのリングが存在する。青色は波長が1.5マイクロメートル、シアンは1.64と2マイクロメートル、黄色は3.23マイクロメートル、オレンジは4.05マイクロメートル、赤色は4.44マイクロメートルの光を表す。ガイドラインがない画像は一番下に示します。
NASAは8月31日、ジェームズ・ウエッブ宇宙望遠鏡(以下JWST)の近赤外線カメラ(NIRCam)等によって捉えられた超新星・SN 1987Aの画像を公開した(図1)。写真中央は超新星爆発によって放出された物質で鍵穴のように形づけられている。さらにこの鍵穴は左右の2つの三日月によって構成されているように見える。その外側には白い点線で囲まれたリング、さらに外側にも存在する砂時計のような形をしたリングが存在するが、これらは超新星が始まる前の数万年前から放出され続けてきた物質によって形成されたと考えられている。
超新星・SN 1987AはⅡ型超新星に分類され、大質量星が重力崩壊によって爆発する現象のことをいう。カミオカンデで初めて太陽系外天体からのニュートリノが観測されたが、このニュートリノはSN 1987Aから放出されたものである。大マゼラン雲の中に存在し、地球からおよそ168,000光年離れた場所に位置する。1987年2月に初めて観測が行われ、そこからガンマ線からラジオ波にかけての様々な波長によって約40年間に渡り観測され続けてきた。
今回JWSTやハッブル宇宙望遠鏡、スピッツアー宇宙望遠鏡、チャンドラX線望遠鏡によってSN 1987Aの詳細な内部構造が捉えられた。中心には超新星によって放出されたガスや塵の塊が存在する。塵の密度があまりにも高いため、近赤外線を通り抜けることができず、JWSTによって暗く映る部分が、鍵穴のような構造を形づけている。またこの鍵穴は、超新星によって形作られた2つの小さな三日月が並んでいるような構造をしている。これらの三日月は、超新星が起こった際の星の外層部分の名残である。その見た目以上に、さらに多くのガスや塵の塊がここに存在する可能性があるとしている。さらに鍵穴の周りには白い点線でできたリング(equatorial ring)が存在し、その外側には砂時計のような形をしたリング(outer ring)が存在する。これらのリングは超新星が起こる数万年前から星の中心から放出された物質によって形成されてきたと考えられている。さらに内側のリングは超新星による衝撃波が直撃する位置にある。
今回の観測によって超新星の内部構造が鮮明に捉えられたことで、超新星が起こる前の内部構造の形成過程から、超新星によって形成されると考えられる中性子星の構造まで明らかにされることが今後期待されるとしている。引き続きJWSTのMIRIやNIRCamの観測によって新たな超新星のデータがもたらされることも期待されている。
図2 ( C ) NASA, ESA, CSA, M. Matsuura (Cardiff University), R. Arendt (NASA’s Goddard Spaceflight Center & University of Maryland, Baltimore County), C. Fransson.
JWSTが捉えた超新星・SN 1987Aの姿。