塵などで半分隠された球状星団ターザン12の姿が明らかに

9月9日

 

 

 

図1 ( C ) ESA/Hubble & NASA, R. Cohen (Rutgers University).

ハッブル宇宙望遠鏡が捉えた球状星団ターザン12の姿。天の川銀河中心に富んでいる塵やガスに覆われた星たちの姿も捉えられた。

 

 ESAは7日、ハッブル宇宙望遠鏡によって捉えられた球状星団・ターザン12の写真を公開した(図1)。球状星団は通常ほぼ対称的に丸い形をしているが、図では右半分が青く光る星が集まったように見えており、左半分は赤く光る星が集まったように見える。実際には左半分にも青い星が集まっているが、このように赤く写るのは、青い光が星間塵によって吸収・散乱されているためである。今回の観測によって、ターザン12の年齢と化学組成の関係が明らかにされ、天の川銀河の他の星団の年齢が明らかになることが期待されるとしている。

 

 球状星団は数万~数百万個もの星が自己重力によって集まった天体であり、丸い形をしている。天の川銀河では150個ほど見つかっているが、ほとんどがハローと呼ばれる天の川銀河の外縁部に存在しており、天の川銀河中心付近に存在する球状星団は珍しい。

 

 球状星団・ターザン12はいて座方向約15000光年の場所に位置する。天の川銀河中心付近に位置するため、ガスや塵が豊富に存在する。ハッブル宇宙望遠鏡は1990年の打ち上げから球状星団の観測を続けているが、ターザン12は天の川銀河中心付近の塵に富む場所に位置することから、ターザン12から放たれる光が吸収されたり、散乱されたりしてその光を捉えることすら難しい天体であった。波長が短い光ほど、吸収や散乱の影響を受けやすいためである。

 

 今回の観測ではハッブル宇宙望遠鏡のAdvanced Camera for SurveysとWide-Field Camera 3が用いられており、ターザン12の星の光をさえぎる塵やガスの効果を取り除くことに成功した。図1の写真を見ての通り、球状星団左半分の塵が多い部分では、青い星からの光が散乱され、その部分だけ赤い色に見える。我々の住む地球上においても似た現象が起きている。それは、太陽が上にあるときは大気散乱によって青い光が散乱されて空が青く見えるが、夕方になって陽が沈むと、より多くの青い光が散乱されるようになり、赤っぽく見える現象のことである。ちなみに図1において、他の星より明るく輝く青い星や赤い星は、実際にはほとんどが球状星団と地球の間にある星であり、球状星団を構成する星ではない。

 

 今回の観測によって、ターザン12の年齢と、化学組成の関係が明らかにされ、天の川銀河の他の星団の年齢が明らかになることが期待されるとしている。