太陽系外惑星でメタンと二酸化炭素を発見

9月16日

 

 

 

図1( C ) NASA, CSA, ESA, J. Olmstead (STScI), N. Madhusudhan (Cambridge University).

今回JWSTによる観測対象となった太陽系外惑星K2-18bのイメージ図。主星はK2-18であり、赤色矮星である。

 

 ケンブリッジ大学のNikku Madhusudhan氏を中心とする研究チームは11日、ジェームズ・ウエッブ宇宙望遠鏡(以下JWST)に搭載された近赤外線カメラのデータを処理するNIRISSとNIRSpecによる太陽系外惑星・K2-18bの観測データを解析した結果、メタンや二酸化炭素を含む炭素化合物を発見したと発表した。この結果は、K2-18bがハイセアン惑星(水素を豊富に含む大気の下に、惑星規模の海が存在し、生命が存在する可能性がある惑星)であることを示唆するとしている。

 

 K2-18bはしし座方向約120光年に位置する太陽系外惑星系(K2-18)の惑星である。地球と海王星の間くらいの大きさであり、質量は地球のおよそ8.6倍である。我々の住む太陽系には似たような大きさの惑星が存在しない。主星はK2-18であり、赤色矮星である。かつてハッブル宇宙望遠鏡によってK2-18bの観測が行われ、大気が存在することが観測されたため、生物が生存するかもしれないという認識が天文学者の間で広まった。しかし、この大気がどのような化学物質で構成されているかは謎であった。

 

 今回研究チームはJWSTに搭載されたNIRISSとNIRSpecによる観測データからK2-18bの大気のスペクトルデータを得ることに成功し、メタンや二酸化炭素を含む炭素化合物が存在することが明らかになり、アンモニアが欠乏していることも判明した(図2)。これらの結果から、K2-18bの大気の下に水の海があることも示唆されるとしている。さらに硫化ジメチル(DMS)も存在する可能性があるとしている。DMSは海のプランクトンにより作られ、磯の匂いのもととなる物質であり、大気中に放出されると雲を作る働きがある。なお今回のスペクトルデータを得るにあたり、K2-18bが主星の前を通る際の、K2-18bの大気を通過する主星からの光のデータを用いている。Madhusudhan氏は「今回の観測によって生物生存可能性を考えるうえで、多様な化学環境があることを考慮する必要があることが示された」とコメントしている。

 

 K2-18bがハビタブルゾーンにあり、大気に炭素化合物が含まれることがわかったが、これらのことが必ずしも、生物が生きていることを証明するわけではない。K2-18bの半径が地球半径のおよそ2.6倍あり、内部には高圧の氷でできたマントルがあると考えられている。その一方で大気は薄いため、気温がかなり高くなり、生物生存可能性があるかどうかわからないとしている。研究チームの一人であるカーディフ大学のSubhajit Sarkar氏は「K2-18bのような惑星は太陽系には存在しないが、遠い宇宙全体で見ると一般的にある惑星かもしれない。今回の観測結果によってハビタブルゾーンにある惑星のスペクトルが得られたため、大気にある分子をより深く研究できるようになった」とコメントしている。

 

 今後研究チームはJWSTの中間赤外線カメラ(MIRI)によるK2-18b惑星のデータを解析し、今回の研究結果が妥当なものであるかを確認するとともに、さらに新たな発見がなされることを期待するとしている。

 

 

図2 ( C ) NASA, CSA, ESA, J. Olmstead (STScI), N. Madhusudhan (Cambridge University).

JWSTのNIRISSとNIRSpecによって得られた太陽系外惑星K2-18bのスペクトル。