ハッブル宇宙望遠鏡が捉えた赤い背景につつまれた星雲

10月1日

 

 

 

図1 ( C ) ESA/Hubble & NASA, R. Sahai.

 

 NASAは9月29日、紅葉シーズンにぴったりの画像として、カシオペア座方向約7,000光年の位置にある輝線星雲・ウェスターハウト5の画像の一部を公開した(図1)。背景が赤く見える現象は、水素原子中の高エネルギー電子がエネルギーを放出する際に、Hα線と呼ばれる放射線の放出によって起きるものである。右下にある星雲の姿と共に、おたまじゃくしの形をしたガス粒frEGG(写真中央やや左上にあり、free-floating Evaporating Gaseous Globuleの略)の姿が印象的である。このfrEGGは「KAG2008」 globule 13もしくはJ025838.6+604259という名前が付けられている。

 

 frEGGやEGGは他の密度の低いガスに比べて光蒸発しにくい性質がある。光蒸発とは、若い星などから放たれる多量の紫外線などによってガスがイオン化され、分解されていく現象のことをいう。そもそもEGGと呼ばれるガス粒は1995年にハッブル宇宙望遠鏡によって「創造の柱(わし星雲中のガス塊)」から初めて発見された。しかしこのEGGは今回公開されたfrEGGとは違って、星雲から完全に分離されたものではない。今回公開された画像のようなおたまじゃくしの形をしたEGGは、頭としっぽの形がはっきりしており、星雲から完全に分離されている。この宙に浮くようなfrEGGは最近発見がなされたものである。

 

 frEGGとEGGはとても興味深い研究対象として注目されている。それはこれらのガス粒が紫外線に耐えられるほどの密度がないにも関わらず、若い星がたくさん集まる領域の中で生き残っているからである。このことはガス粒の中にあるガスが紫外線によるイオン化や光蒸発の影響を受けていないことを示唆しており、天文学者たちはガス粒が原始星を形成する上で重要な役割を果たしていると考えている。またFrEGGやEGGが新しい星を生み出すのに重要な役割を果たしているとしている。