10月9日
図1 ( C ) NASA, ESA, R. Chandar (University of Toledo), and J. Lee (Space Telescope Science Institute); Processing: Gladys Kober (NASA/Catholic University of America).
ハッブル宇宙望遠鏡の多波長観測によって捉えられた棒渦巻銀河NGC5068。
図2 ( C ) ESA/Webb, NASA & CSA, J. Lee and the PHANGS-JWST Team.
ジェームズ・ウエッブ宇宙望遠鏡の近赤外線観測カメラ(NIRCam)によって撮影された棒渦巻銀河NGC5068。
NASAは6日、ハッブル宇宙望遠鏡(HST)の多波長観測(紫外線、可視光線、近赤外線)によって撮影された、おとめ座方向約2000万光年離れた場所にある棒渦巻銀河NGC5068の写真を公開した(図1)。ピンクがかった赤色の斑点と暗い赤色で示された筋状のものが写真に多く映し出されている。数千にも及ぶピンクがかった赤色の斑点は、星形成領域を示しており、写真には無数の星間塵がちりばめられている。
NGC5068は1785年にWilliam Herschelによって初めて発見され、直径は45000光年と見積もられている。またウォルフ-ライエ星と呼ばれる古くて巨大な質量を持つ星が110個ほど見つかっている。ウォルフ-ライエ星は太陽の25倍以上の質量を持ち、100万倍ほどの明るさで輝く星であり、質量を失うペースも速い。天の川銀河には220個ほど見つかっている。
NGC5068は全体的な明るさが弱いため、人間の目で見ることは難しい。また若い星からは紫外線が放出されているため、なおさら人間の目で見ることは難しく、高性能な紫外線観測でしかその姿を捉えることが難しいとされていた。
今回NASAが公開したHSTの写真(図1)中央上側に白く明るく輝く棒状のものがあるが、ここが銀河NGC5068の中心部であり、たくさんの原始星が集まっている。また棒の背後にはブラックホールが存在し、強大な重力によって原始星を引きつけている。また棒状のもののまわりに存在するピンクがかった赤色の斑点は、イオン化した水素原子で構成されたガスの領域を示しており、ここに若い星団が存在すると考えられている。また不明瞭であるものの、ピンクがかった赤色の斑点は棒渦巻銀河の渦巻に沿って配置されており、この部分で新たな星形成が行われている。
またNGC5068は今年の6月にジェームズ・ウエッブ宇宙望遠鏡(JWST)の近赤外線観測カメラ(NIRCam)によっても撮影された(図2)。近傍銀河のガス領域における星形成についての研究の一環として撮影されたものである。
今後HSTとJWSTの観測データをもとにNGC5068内における星形成についての理解が深まることが期待されている。