10月14日
図1 ( C ) ESA/Gaia/DPAC, CC BY-SA 3.0 IGO
人工衛星Gaia DR3のデータ解析から得られた、ω星団の画像。これまで以上に中心部分の星を個別に見分けられるようになった。
図2 ( C ) ESA/Gaia/DPAC, CC BY-SA 3.0 IGO
人工衛星Gaia DR3データの解析によって381個ものクウェーサー候補天体が発見された。
図3 ( C ) ESA/Gaia/DPAC, CC BY-SA 3.0 IGO
人工衛星Gaia DR3のデータ解析によって太陽系にある156823個もの小惑星の軌道が特定された。外側の青い線は木星の軌道。内側の様々な色で示された無数の線が、今回特定された小惑星の軌道。
ESAは10日、位置天文衛星GaiaのDR3データから得られた新たな天体の姿を公開した。あまりにも明るく輝いているために、個々の星の特定が難しいとされる球状星団・ω星団において、中心付近における新たな星約50万個を特定し、それらの動きや位置を推定することに成功した(図1)。また重力レンズ効果を用いて、天体の光が増したり、像が複数に分解された381個ものクウェーサー候補天体を見つけることに成功した(図2)。さらに太陽系にある156823個もの小惑星の軌道を特定することにも成功した。今後さらに新たなデータを含むGaia DR4が2026年以降に公開予定であり、あらたな宇宙の描像が描かれることが期待されている。以下に今回のDR3データの解析によって得られた新たな天体の描像を示していく。
1.ω星団において新たな星50万個を特定した
ω星団は地球から見える天の川銀河内の球状星団として、もっとも大きく典型的な球状星団であり、約1000万個の星が集まっている。通常の球状星団が数万個~数百万個の星からなることを考えると、いかに多くの星が集まっているかがわかる。また球状星団はとても古くからある天体であり、宇宙初期の状態がどうなっていたのかを探るうえで重要な天体であると考えられている。これまでのω星団の観測では、中心部分があまりにも星が集まり、明るく輝いているがために、個々の星を分解して観測することが難しかった。しかし今回のGaiaによる観測では、個々の星を正確に捉えるというよりかは、自然に全体を写し出すことによってω星団の個々の星をこれまで以上に正確に特定することに成功した。中心付近において新たに526587個の星が発見された。ω星団に関する研究に携わったメンバーの一人であるAlexey Mints氏は「今回のデータ解析結果を最大限に活かすことにより、ω星団における星がどのように分布しているかや、星の動きなどを決めることができる」とコメントしている。
2.クウェーサー候補天体の発見
人工衛星Gaiaはそもそも天の川銀河内の星の特徴を捉えることを目的としていたが、データ解析を行うことにより、天の川銀河を超えた遠くの天体の姿を捉えることに成功した。それは重力レンズ効果を用いることで可能となった。重力レンズ効果は天体と観測者の間にある巨大な重力を持つ天体(ブラックホールや巨大星など)がレンズとなり、天体からの光の軌道を曲げたり、増光したり、像を複数にする現象のことである。今回Tineke Roegiers氏、Christine Ducourant氏、Laurent Galluccio氏を中心とする研究チームがGaia DR3のデータを解析することによって遠くの宇宙にある381個にも及ぶクウェーサー天体候補を発見することに成功した。
3. 156823個にも及ぶ小惑星の軌道の特定
Mariasole Agazzi氏を中心とする研究チームは、人工衛星Gaiaデータの解析によって、太陽系にある156823個にも及ぶ小惑星の軌道を特定することに成功した。
これら3つ以外にも様々な宇宙の描像が今回のDR3のデータ解析によって描かれている。今後公開予定のGaia DR4によって新たな知見がもたらされることが期待されている。