JWSTが捉えた星形成領域・NGC 346の美しい姿

10月21日

 

 

 

図1 ( C ) NASA, ESA, CSA, N. Habel (JPL), P. Kavanagh (Maynooth University).

JWSTが捉えた小マゼラン雲にある星形成領域NGC 346の姿。青いフィラメント構造がヨットのように広がっている。ヨットにはピンク色のカーテンがかけられている。ピンク色の斑点と青いフィラメント構造には多くの原始星が存在する。

 

 NASA/ESA/CSAは10日、ジェームズ・ウエッブ宇宙望遠鏡(以下JWST)の中間赤外線観測装置(MIRI)によって捉えられた小マゼラン雲内の星形成領域・NGC 346の姿を公開した(図1)。NGC 346は小マゼラン雲内で一番大きくかつ、明るく輝く星形成領域である。画像を見ると、ヨットのように青いフィラメントが右上から左下に広がり、さらに写真中央から左上にかけて帆のように青いフィラメントが伸びている様子がわかる。そして全体的にピンクのカーテンがかけられたような姿が印象的である。

 

 小マゼラン雲は、きょしちょう座方向にあり、南半球から目で見ることができる天の川銀河近傍の銀河である。小マゼラン雲内には、星の核融合や超新星によって作られた重元素が天の川銀河よりも少ないため、原始的な宇宙の状態を表していると考えられている。また小マゼラン雲内には球状星団などが存在し、星が大量に作られている。しかし宇宙における塵はケイ素や酸素のような重元素から作られるため、小マゼラン雲内では星の材料となる塵が少ないのではないかと、科学者の間では考えられている。塵が少ないにも関わらず、星が大量に作られる理由については未だ謎が残されていることとなる。

 

 今回公開されたMIRIの画像(図1)は近赤外線観測装置・NIRCamによって撮影された画像とともに2023年1月に公開され、NGC 346において多量の塵が科学者の予測に反して観測された。図1において、ヨットのように広がる青いひだ状のものが、ケイ酸塩ダストや多環芳香族炭化水素(PAHs)のある場所を示している。ピンク色に拡散された光は巨大星によって温められた塵がある場所を示している。特に画像中央左に弧状に光っているものがあるが、弧の中央近くにある星からの光の反射を示している可能性があるとしている。また画像に写る複数のピンク色に光り、短い回折スパイクを出す斑点や青いフィラメント(糸状のもの)には、たくさんの原始星が存在すると考えられている。若い星が存在するこのような構造はすでに1001個も発見されている。

 

 今回の観測結果は数十億年も前の「宇宙の昼」と呼ばれる重元素が小マゼラン雲のように少なく、星形成が活発に行われていた時代を理解するのに、重要な観測成果であるとしている。