地球近傍の太陽系外惑星・LTT 1445Acの大きさを特定することに成功

11月18日

 

 

 

画像1 ( C ) NASA, ESA, L. Hustak (STScI).

太陽系外惑星系・LTT 1445のイメージ図。真ん中に主星の一部LTT 1445A、その右に1445B、Cの連星系の姿がある。これらの3つの星は連星系を成しており、LTT 1445の主星である。左下にある惑星が今回研究対象となったLTT 1445Ac。LTT 1445Aの前の黒いドットはLTT 1445Abである。

 

 ハーバード・スミソニアン天体物理学センターのEmily Pass氏を中心とする研究チームは16日、ハッブル宇宙望遠鏡の観測データを解析した結果、2022年に初めて発見された地球近傍の太陽系外惑星・LTT 1445Acの大きさを特定することに成功したと発表した。LTT 1445Acの直径は、地球の直径の1.07倍であることが判明し、地球と同じ岩石型惑星に分類され、表面重力もおよそ地球と同じくらいの大きさであることが推測されるとしている。しかし表面温度がセ氏温度260℃であり、とても高温なため生物生存可能性はないとしている。

 

 太陽系外惑星・LTT 1445Acは3つの赤色矮星からなる3重連星の一部であるLTT 1445Aを主星とし、その主星のまわりを公転している。LTT 1445Aはエリダヌス座方向約22光年離れた場所にある。2022年にNASAのTESSプログラム(トランジット法による太陽系外惑星の探索)によって太陽系外惑星LTT 1445Acの存在が初めて発見された。しかし地質学的性質については、TESSプログラムが可視光による観測を行っていないことから、よくわからないことが多く残されていた。トランジット法は、太陽系外惑星が主星の前を通る際の減光度合いを見て、太陽系外惑星の存在を認識する方法である。TESSの観測データを用いた場合は、太陽系外惑星が主星の原始星円盤の一部をかすめとるがゆえに生じる減光をとらえて太陽系外惑星の存在を認識する可能性があり、この場合には太陽系外惑星の直径を正しく認識するのは困難である。

 

 Emily Pass氏は太陽系外惑星の・LTT 1445Acの正しい直径の大きさを知るべく、可視光観測を行ったハッブル宇宙望遠鏡の観測データを用いて解析を行うこととした。その結果、主星の円盤の一部をかすめとらない、純粋な惑星が主星の前を通過することによる減光を捉えることに成功した。そしてLTT 1445Acのサイズが地球の直径のおよそ1.07倍であることを特定することに成功した。また表面温度がセ氏260℃であることも判明した。

 

 さらに今回のハッブル宇宙望遠鏡のデータ解析によって、3重連星からなるLTT 1445のうち、残りの2つの主星LTT 1445Bと1445Cが重力相互作用によって強く結びついており、共通重心の近くをまわっていることがわかった。これらの2つの星は、LTT 1445Aから47億km離れた場所にあるとしている。またこの3重連星からなる主星の並びと真横からみたB、Cの主星の軌道面をみると、LTT 1445惑星系にある全ての主星や惑星が同じ軌道共面上にあることを示唆しているとしている。

 

 Emily Pass氏は「トランジット法により発見された太陽系外惑星は、その大気の状態をも明らかにすることができるため、とても興味深い。今回はハッブル宇宙望遠鏡の観測データによって地球近傍の太陽系外惑星の特徴を捉えることに成功したことはとても意義のあることである。ジェームズ・ウエッブ宇宙望遠鏡などの追観測によってさらなる太陽系外惑星の多様性が明らかになることを期待している。」とコメントしている。

 

 またマックスプランク天文学研究所のLaura Kreidberg氏は「ハッブル宇宙望遠鏡の観測データは引き続き、太陽系外惑星の理解を進める上で重要である。地球からわずか22光年しか離れていない太陽系外惑星は、大気の状態を理解する上で重要な研究対象となる。」とコメントしている。