11月25日
画像1 ( C ) NASA, ESA, CSA, STScI, S. Crowe (UVA).
ジェームズ・ウエッブ宇宙望遠鏡の近赤外線観測装置が捉えた、銀河中心部にある星形成領域・いて座Cの姿。シアン色は若い星団から放たれた、イオン化された水素がある領域を表す。シアン色の領域には白い針状の構造が多く存在する。またシアン色の領域で包まれた漏斗状の暗い領域には、原始星が存在し、アウトフローを出している。焚火のような光で示されたものがアウトフローである。青色の光は162マイクロメートル、シアン色が405ナノメートル、オレンジ色が360マイクロメートル、赤色が470ナノメートルの光を示す。
NASA/ESA/CSAは20日、ジェームズ・ウエッブ宇宙望遠鏡(以下JWST)の近赤外線観測装置(NIRCam)によって撮影された銀河中心部(地球からおよそ25000光年離れた場所)にある星形成領域「いて座C」の詳細画像を公開した(画像1)。シアン色で表されたイオン化された水素の領域や、原始星からアウトフローが出される様子など、これまでに見つからなかった多くの特徴があらわになった。画像右側のピンク色で表された雲は、今回の観測で初めて見つかったものであり、今後その詳細が明らかになることが期待されるとしている。
いて座 Cは銀河中心部の巨大ブラックホール・いて座A*から300光年ほど離れた場所にある。画像はいて座Cの50光年ほどの大きさを切り取った画像であり、画像中にはおよそ50万個ほどの光り輝く星が写っている。画像中でひときわ目立つのは、シアン色で表された領域であり、ここはイオン化された水素がある領域を示している。イオン化された水素は、若い巨大星団から放出されたものである。このシアン色の領域は、近赤外線では暗く映る領域のまわりを覆っており、長さはおよそ25光年ほどである。またシアン色の領域の中には、白く映る針状の構造が、その向きはばらばらであるものの、散りばめられている様子がわかる。
シアン色の領域に包まれるように存在する、近赤外線で暗く写っている箇所(画像中で漏斗のような構造)には、質量を得ながら成長している原始星団があり、画像をみるとそのうちの一つの原始星が、焚火のように赤く輝くアウトフローを生み出している様子が写し出されている。この原始星団は以前から存在が知られており、大きな原始星であれば、質量が太陽質量のおよそ30倍もある。原始星団の姿がはっきりと写らないのは、ここに大きな密度の濃い雲が存在し、星の光を通さないからである。しかしアウトフローを出す星は、間もなくその星の光り輝く姿をあらわにすると考えられている。暗く映る箇所はシアン色の領域の右下にも存在し、小さな穴のように写っているがここでも形成途中にある星が存在すると考えられている。
今回のJWSTの観測により、銀河中心にある星形成領域の詳細な姿が写し出され、どのようにして星が形成されるかや、銀河内の他の星形成領域と比べて星の形成過程がどうなっているかなどの、多くの情報がもたらされた。このことで銀河の中心部においては、銀河の渦巻腕に比べて巨大星が多く存在するかどうかの疑問について、解決できる可能性があるとしている。また画像1の右側にピンク色の雲が存在するが、これは今回の観測で初めて見つかったものであり、今後詳細な特徴が見つかることが期待される。